日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハルス」の意味・わかりやすい解説
ハルス(Russell A. Hulse)
はるす
Russell A. Hulse
(1950― )
アメリカの天文学者、物理学者。ニューヨーク生まれ。ブロンクス科学高校時代に望遠鏡づくりに興味を覚え、古いテレビの部品などを使って電波望遠鏡を両親の別荘で自作したが失敗する。物理学、天文学、電子機器の開発のなかから、大学では物理学を専攻することに決め、クーパーユニオン大学を1970年に卒業。マサチューセッツ大学では大学院生としてJ・テーラーの指導を受け、1975年に博士号を取得した。
大学院生時代である1974年に、テーラーとともに「連星パルサー」という新しい天体を発見した。周期的に電波をだす中性子星であるパルサーが、中性子星を相方として互いの周りを回っているのが連星パルサーである。パルサー自体はすでに発見されていたが、それが連星をなしていることが新発見であった。この発見についての論文は1978年に発表され、連星パルサーが徐々にエネルギーを失う過程を詳細に観測することで、アインシュタインの一般相対性理論で予言されている「重力波」の存在が間接的に確認された。新種のパルサーの発見により、天文学だけでなく、重力の研究にも新しい領域を開拓したことが高く評価され、1993年にテーラーと共同でノーベル物理学賞を受賞した。
[馬場錬成]
ハルス(Frans Hals)
はるす
Frans Hals
(1581/1585―1666)
オランダの画家。アントウェルペン(アントワープ)に生まれたと推測される。カレル・ファン・マンデルKarel van Mander(1548―1606)に師事し、1611年ハールレムの聖ルカ組合に登録された。肖像画に優れ、この分野で当時の市民生活に取材した国民的な絵画を基礎づけた功労者である。1616年の作品『聖ゲオルギウス市民隊の幹部たちの宴会』(ハールレム、ハルス美術館)は、集団肖像画に新境地を開いた代表作として名高い。集団肖像画における彼の画面構成の多様さと、人物の巧みな性格描与は、後世の追随を許さないとさえいわれる。単独の人物画では『陽気な酒飲み』(アムステルダム国立美術館)や『つばの広い帽子をかぶった男』(カッセル国立コレクション)が代表作で、瞬時の表情をとらえる奔放な筆触は「印象派的」との評もある。晩年は不遇で、ハールレムの養老院で世を去った。この養老院は現在ハルス美術館となっている。
[野村太郎]