改訂新版 世界大百科事典 「ベイラム」の意味・わかりやすい解説
ベイラム
Pimenta racemosa (Mill.) J.M.Moore
西インド諸島,ギアナ,ベネズエラ原産のフトモモ科の小高木。英名はbay rum tree,bay tree,bayberry。高さ6~15mほどになり,葉は皮質で倒卵形から楕円形,長さ15cmほどになり対生する。枝端の葉腋(ようえき)から出る円錐花序に白色花を多数つけ,果実は黒熟する。オールスパイスに近縁で性状も類似している。葉に1~1.4%の精油を含み,芳香がある。この植物の葉をラム酒とともに蒸留したものが整髪料のベイラムである。しかし現在では,葉を水蒸気蒸留またはアルコール抽出して得られる,黄色ないし褐色で芳香性のベイ油bay oilが,整髪料,セッケン,トイレット防臭などの香料として用いられる。ドミニカ産のものが最も良質とされ,一部栽培もされるが,多くは野生樹から採集された乾燥葉が輸出され,主としてアメリカで抽出が行われる。ベイ油の主成分はオイゲノール,メチルオイゲノールなどで,丁子(ちようじ)油に似た香りがする。果実はインドでカレー料理に利用される。なお,オールスパイスの葉をラム酒に浸した香料もベイラムと呼ばれ,整髪料にされる。本来ベイbayとはゲッケイジュのことであり,ベイラムは西インド諸島のゲッケイジュの意味でWest Indian bay treeとも呼ばれる。ゲッケイジュの葉から得られる精油も,整髪料のベイラムの香料の代用にされることがある。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報