水への溶解度が小さい物質(たとえば油類)を蒸留精製する際に水を加えたり水蒸気を吹きこんだりして行う蒸留法。互いに不溶解な二つの物質の混合物の蒸気圧は,それぞれの物質の蒸気圧の和に等しいので,水に溶けない物質に水を加えて加熱すると,その物質の蒸気圧と水の蒸気圧との和が大気圧に等しくなると沸騰することになり,その物質の沸点より低い温度で沸騰する。したがって,大気圧下で蒸留すると分解したり重合したりする物質も,水蒸気蒸留によれば低い温度で蒸留できることになる。このように,水に溶けにくい物質では真空蒸留の代りに水蒸気蒸留を用いることができ,場合によっては両者を併用することもできる。水を加えて加熱する代りにフラスコまたは蒸留缶に直接水蒸気を吹きこむのが普通である(図)。
執筆者:平田 光穂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
沸点の高い物質に水蒸気を吹き込んで、その沸点よりも低い温度で留出させる蒸留法。普通の蒸留では分解してしまう物質や、沸点が高すぎる物質の蒸留は、減圧蒸留を用いればよいが、高沸点成分の分圧を減少させるため水蒸気を吹き込んで蒸留すれば、高沸点成分と水の蒸気圧の和が全圧となるため、大気圧下で通常の沸点以下の温度で蒸留ができる。これを水蒸気蒸留という。蒸留装置の塔頂製品が水に不溶な油類ならば、水と2液相を形成するので水を簡単に分離できる。
水蒸気蒸留は多くの場合、減圧蒸留より高価につくため、減圧が不便または小規模な回分蒸留でよく用いられる。この場合は、蒸留缶の沸騰液に直接水蒸気を吹き込んで行う回分蒸留である。
[早川豊彦]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
液体中に水蒸気を通じながら行う蒸留.一般に,互いに溶け合わない2液の混合物を加熱するとき,両者の蒸気圧の合計が外圧と等しくなったときに両者が同時に蒸留される.したがって,その液体単独のときよりも低い温度で液体の留出が起こる.比較的沸点の高い,水と溶け合わない有機化合物の蒸留にしばしば用いられる.相互溶解性を低下させるために,水溶性塩を加えることもある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
※「水蒸気蒸留」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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