べんざし

改訂新版 世界大百科事典 「べんざし」の意味・わかりやすい解説

べんざし

九州の海岸部の村で,漁労の指揮者あるいは網元などを指すことばとして伝承されている。主としてハツダ網の指揮者をこう呼んでいるが,熊本県御所浦島では地曳網の頭もベンザシと呼んでいる。一方,長崎県の小浜では,網元をベンザシ,海に出て漁労を指揮する漁労長オキベンザシと区別して呼んでいる。また種子島では,魚見役(うおみやく)あるいは魚見役を補佐し,率先して漁労に従事する役目のものをベンザシと呼んでいる。また漁労組織とは別に,浜の村の庄屋に当たる者を呼ぶことも多い。もともと,弁済使から来歴したことばであろうが,《日葡辞書》(1603)には,漁師頭で,主人よりなすべき仕事の指図をうける者,あるいは農夫の頭をベンザシと呼ぶとある。事実,大分県では農家の主人または長男ベンザイドンという例もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のべんざしの言及

【米良荘】より

…狩りの作法のなかには古式を伝えると思われるものが多く,そのいくつかは〈狩の巻〉または〈西山小猟師一流〉と称する秘伝書に記されたものと共通するところが少なくない。行政上の役人の呼称に中世的名称のべんざし(弁済使)と呼ばれるものがあったのも古い生活の残存を示すといえよう。【千葉 徳爾】。…

※「べんざし」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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