日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンテンウオ」の意味・わかりやすい解説
ベンテンウオ
べんてんうお / 弁天魚
Pacific fanfish
[学] Pteraclis aesticola
硬骨魚綱スズキ目シマガツオ科に属する海水魚。岩手県以南の太平洋岸、佐渡島(さどがしま)以南の日本海岸、韓国浦項(ほこう)、オーストラリア南東岸など、西太平洋、中央太平洋、東太平洋に分布する。体は著しく側扁(そくへん)し、長楕円(ちょうだえん)形。吻(ふん)と下顎(かがく)を除いて全身が薄く、ほとんど肉がない。上下両顎には2列の鋭い歯がある。体ははがれにくい菱形(ひしがた)の鱗(うろこ)で覆われる。背びれは吻の中央部、臀(しり)びれは目の後縁下方付近から始まる。両ひれはきわめて高く、広げると扇子のような形になり、後端は尾びれ基底に達する。和名は、このひれが七福神の一つとされる弁才天(べんざいてん)(弁天)がまとう羽衣のようにみえることに由来する。背びれは46~55軟条、臀びれは40~43軟条。両ひれの前部に肥厚した1本の軟条がある。胸びれは鎌(かま)状で、体高より短い。腹びれは喉部(こうぶ)にあり、臀びれ直前に位置するが、きわめて小さい。体色は灰色がかった銀白色。背びれと臀びれは濃黒色。水深100メートル以浅の中層にすむ。きわめてまれに定置網でとれる。マグロ類に食べられているが、詳しい生態はほとんどわかっていない。最大体長は43センチメートルになる。食用とはしない。
[鈴木 清・尼岡邦夫 2023年11月17日]