デジタル大辞泉 「羽衣」の意味・読み・例文・類語
はごろも【羽衣】[曲名]
羽衣伝説に取材した、長唄・一中節・
[ 一 ]①は中国の霓裳羽衣(げいしょううい)や天衣無縫(てんいむほう)などが基になってそのイメージが形成されていったと考えられる。→羽衣伝説(はごろもでんせつ)
日本の芸能,音楽の曲名。
(1)能。三番目物。鬘物(かつらもの)。作者不明。シテは天人。駿河の三保の浦に住む漁師の白竜(はくりよう)(ワキ)が,松の枝に掛けてある美しい羽衣を見つけて持ち帰ろうとすると,天人(シテ)に呼びとめられる。天人は,その羽衣を取られると自分は天上へ帰れなくなるといって,嘆き悲しむので,白竜は,羽衣を返す代りにと天上界の舞を所望する。天人は羽衣を身にまとい,三保の松原の春景色をめでながら舞を舞い(〈クセ・序ノ舞〉),富士を見下ろして空遠く去って行く(〈ノリ地〉)。とくに名作というほどの能ではないが,平明な筋と,のどかな趣が喜ばれ,所要時間も長くないので上演の回数がはなはだ多い。
執筆者:横道 万里雄(2)歌舞伎舞踊。長唄と常磐津節の掛合。(1)に取材したもの。1888年1月東京歌舞伎座初演。作詞3世河竹新七,作曲13世杵屋(きねや)六左衛門,6世岸沢式佐。振付初世花柳寿輔,花柳勝次郎。配役は5世尾上菊五郎の天人,尾上栄三郎(6世尾上梅幸)の伯了。新古演劇十種の一。宙乗りで天人の天空を飛び去るさまを見せたのが特色。常磐津節《松廼羽衣(まつのはごろも)》はこれから独立,整理したもの。ほかに羽衣伝説に取材した邦楽曲として,長唄《天人羽衣》《新曲羽衣》,一中節《松の羽衣》(これを移曲した山田流箏曲の掛合物もある),常磐津節《三保松富士晨明(みほのまつふじのあけぼの)》などがある。
執筆者:権藤 芳一(3)箏曲。《羽衣之曲》とも。組歌奥組。北島検校(?-1690)または牧野検校作曲と伝えられる。6歌からなるが,第1歌は序,第6歌は跋とも扱え,第2~5歌を四季に配する。曲名は,第1歌中に〈天の羽衣稀に着て〉とあることにより,第2歌以下はまったく羽衣伝説にはよらないが,全体に祝賀的な歌意に富み,祝儀曲として用いられる。
執筆者:平野 健次
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能の曲目。三番目物。五流現行曲。作者は不明。三保松原(みほのまつばら)の漁師白竜(はくりょう)(ワキ)が松にかかった美しい衣をみつけ、家の宝にと持ち帰ろうとする。シテの天人が呼びかけ、それは天人の羽衣であり、元のところに返すように頼むが、白竜はそれでは国の宝にと、持ち去ろうとする。羽衣がなくては天に帰ることができないという嘆きに、白竜は月の世界の舞を所望し、羽衣を得た天人は、美しい景色をたたえ、君が代を祝い、舞を舞いつつ、宝を国土にまき散らしながら昇天していく。『丹後国風土記(たんごのくにふどき)』などの羽衣伝説による能で、外国にも類似の白鳥処女伝説が多い。羽衣伝説では天人が漁師・あるいは農民とやむなく結婚し、子供ももうけたあとで羽衣を発見して天に帰るのだが、能は天人を清純なままで昇天させるところに主張がある。
沖縄舞踊の組踊(くみおどり)、江戸時代の玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)作の『銘苅子(めかるしい)』は、この能の翻案であり、沖縄の羽衣伝説の舞踊化。長唄(ながうた)には、江戸期の『天人羽衣』、大正期の『新曲羽衣』があり、一中(いっちゅう)節に江戸期の『松の羽衣』があり、山田流箏曲(そうきょく)『松の羽衣』に発展する。常磐津(ときわず)では明治期の『松の羽衣』。歌舞伎(かぶき)の『羽衣』は、1898年(明治31)の初演で、宙乗りの技法も用いられ、市川家の歌舞伎十八番に対抗する、尾上(おのえ)家の新古演劇十種のうちに選ばれている。
武智鉄二(たけちてつじ)演出のヌード能(日劇ミュージック・ホールで行われた)にも『羽衣』があり、星新一のSF短編『羽衣』では、羽衣がタイムカプセルで過去の地球に観光にきた女性の宇宙服という設定となっている。
[増田正造]
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字通「羽」の項目を見る。
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…そのほかの種に属する園芸品種には,ウリハダカエデの斑入葉に初雪楓(萌芽期に白く斑が入る)や,京錦とよぶ黄斑の品種があり,イタヤカエデには星宿り(黄色の散斑で鮮やかなもの),常盤(ときわ)錦(白斑のもの),エンコウカエデの斑入品で秋風(しゆうふう)錦などがある。 ハウチワカエデに,葉が深裂してクジャクの羽に似ているところから舞孔雀(まいくじやく)の名が付けられている変り葉の品種があり,このような変化葉はほかのカエデ類にもあり,置霜(おきしも),獅子頭(ししがしら),羽衣などは奇形の葉を賞するものである。 トウカエデは緑陰樹として植えられているが,盆栽とされる。…
…このほか,若い男女が山や丘に登り,歌をうたい交わして求婚する歌垣の慣行や,生命は山に由来し,死者の魂は死後再び山に帰っていくという山上他界の観念,春の農耕開始に先だって狩猟を行い,獲物の多寡で豊凶を占う儀礼的狩猟の慣行など,山をめぐる各種の習俗にも共通の特色がある。また,〈記紀〉の神話のなかにあるイザナギ・イザナミ型の兄妹神婚神話,あるいはオオゲツヒメなど女神の死体からアワなどの作物が発生する死体化生神話,さらには羽衣伝説や花咲爺の説話など,神話や説話の要素でも,照葉樹林帯に共通するものが多い。 このように東アジアの照葉樹林帯の民族文化のなかにみられる諸特色と日本の伝統的文化の間には,きわめて多くの共通性と強い類似性がみられることが明らかになってきた。…
…ある男が沐浴(もくよく)している天女の羽衣を隠す。それにより天女を妻とするが,結局,異類との結婚は破局に終わるという異類女房譚の一型で,白鳥処女説話として世界的に分布している。…
…ほとんど全世界に分布する昔話のモティーフで,日本では〈天人女房〉がこれにあたる。若者が水浴中の娘が脱いでおいた白鳥の衣(日本では羽衣)を奪い,妻になることを強要する。数年後妻は衣を見つけて故郷へ去るが,そのとき,自分の帰る先を言い置く。…
※「羽衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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