デジタル大辞泉
「羽衣」の意味・読み・例文・類語
は‐ごろも【羽衣】
1 天女が着て、自由に空中を飛行するといわれる衣。天の羽衣。
2 鳥や虫の羽。
3 半翅目ハゴロモ科とその近縁の科の昆虫の総称。ウンカ類に似るが、前翅が幅広く三角形をなす。植物の汁を吸う害虫。
う‐い【羽衣】
1 鳥のからだをおおう羽毛の総称。
2 仙人・天女などの衣。はごろも。
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は‐ごろも【羽衣】
[1] 〘名〙
① 天人の衣装。天女がこれを着て空中を飛翔(ひしょう)するといわれる。あまのはごろも。あまごろも。
※竹取(9C末‐10C初)「天人の中に持たせたる箱あり。あまのは衣いれり」
※幸若・笛巻(室町末‐近世初)「天人是をとらんとて、羽衣をもって、なでては天にあがり」
② 鳥や虫のはねをたとえていう語。
※源氏(1001‐14頃)幻「は衣のうすきにかはる今日よりは空蝉(うつせみ)の世ぞいとど悲しき」
③ カメムシ(半翅)目ハゴロモ科に属する昆虫の総称。ふつう体長五~一〇ミリメートル前後のウンカに近い仲間で、前ばねが大きくチョウのように三角形状に広がる。植物上に集団でとまる。幼虫はロウ物質からなる尾をもつ。日本には
ベッコウハゴロモ・ヒメベッコウハゴロモ・
スケバハゴロモなど一六種が分布する。近縁の科には体と前ばねが淡緑色で美しいアオバハゴロモ科がある。多くクズにつくが、ミカン・クワ・イネなどに加害するものもある。〔日本昆虫学(1898)〕
[2]
[一] 謡曲。三番目物。各流。作者不詳。駿河国の
三保松原で漁夫の白龍
(はくりょう)が松の木にかかっている衣を見つけて持ち帰ろうとする。そこへ天女が現われて、それは天人の羽衣だから返すように頼むが聞きいれられず、天に帰れないことを嘆く。白龍はその様子を哀れに思い羽衣を返す。天女は喜んでお礼の舞を舞い天に昇る。
(1)長唄「
天人羽衣」。延享二年(
一七四五)江戸
中村座初演。
羽衣物中最古のもの。部分的に下座
(げざ)音楽に残る。羽衣の曲。
(2)一中節「松の羽衣」。文化(一八〇四‐一八)頃初世菅野序遊作曲。のち、山田流の箏曲に改調された。
(3)
歌舞伎所作事。長唄と
常磐津の掛合い。三世河竹新七作詞。一三世杵屋六左衛門(長唄)、七世岸沢佐(常磐津)作曲。初世花柳寿輔・同勝次郎振付け。明治三一年(
一八九八)東京
歌舞伎座初演。新古演劇十種の一つ。
う‐い【羽衣】
〘名〙
① 鳥の羽。鳥類のからだを包む羽毛の総称。年に一、二回生えかわる。一部の種は季節により、また
繁殖期に特殊な色彩に変わる。
② 鳥の羽で作った衣。仙人、天女などが着て、空を飛ぶといわれる。はごろも。あまのはごろも。〔音訓新聞字引(1876)〕〔史記‐孝武帝本紀〕
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羽衣 (はごろも)
日本の芸能,音楽の曲名。
(1)能。三番目物。鬘物(かつらもの)。作者不明。シテは天人。駿河の三保の浦に住む漁師の白竜(はくりよう)(ワキ)が,松の枝に掛けてある美しい羽衣を見つけて持ち帰ろうとすると,天人(シテ)に呼びとめられる。天人は,その羽衣を取られると自分は天上へ帰れなくなるといって,嘆き悲しむので,白竜は,羽衣を返す代りにと天上界の舞を所望する。天人は羽衣を身にまとい,三保の松原の春景色をめでながら舞を舞い(〈クセ・序ノ舞〉),富士を見下ろして空遠く去って行く(〈ノリ地〉)。とくに名作というほどの能ではないが,平明な筋と,のどかな趣が喜ばれ,所要時間も長くないので上演の回数がはなはだ多い。
執筆者:横道 万里雄(2)歌舞伎舞踊。長唄と常磐津節の掛合。(1)に取材したもの。1888年1月東京歌舞伎座初演。作詞3世河竹新七,作曲13世杵屋(きねや)六左衛門,6世岸沢式佐。振付初世花柳寿輔,花柳勝次郎。配役は5世尾上菊五郎の天人,尾上栄三郎(6世尾上梅幸)の伯了。新古演劇十種の一。宙乗りで天人の天空を飛び去るさまを見せたのが特色。常磐津節《松廼羽衣(まつのはごろも)》はこれから独立,整理したもの。ほかに羽衣伝説に取材した邦楽曲として,長唄《天人羽衣》《新曲羽衣》,一中節《松の羽衣》(これを移曲した山田流箏曲の掛合物もある),常磐津節《三保松富士晨明(みほのまつふじのあけぼの)》などがある。
執筆者:権藤 芳一(3)箏曲。《羽衣之曲》とも。組歌奥組。北島検校(?-1690)または牧野検校作曲と伝えられる。6歌からなるが,第1歌は序,第6歌は跋とも扱え,第2~5歌を四季に配する。曲名は,第1歌中に〈天の羽衣稀に着て〉とあることにより,第2歌以下はまったく羽衣伝説にはよらないが,全体に祝賀的な歌意に富み,祝儀曲として用いられる。
執筆者:平野 健次
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羽衣
はごろも
能の曲目。三番目物。五流現行曲。作者は不明。三保松原(みほのまつばら)の漁師白竜(はくりょう)(ワキ)が松にかかった美しい衣をみつけ、家の宝にと持ち帰ろうとする。シテの天人が呼びかけ、それは天人の羽衣であり、元のところに返すように頼むが、白竜はそれでは国の宝にと、持ち去ろうとする。羽衣がなくては天に帰ることができないという嘆きに、白竜は月の世界の舞を所望し、羽衣を得た天人は、美しい景色をたたえ、君が代を祝い、舞を舞いつつ、宝を国土にまき散らしながら昇天していく。『丹後国風土記(たんごのくにふどき)』などの羽衣伝説による能で、外国にも類似の白鳥処女伝説が多い。羽衣伝説では天人が漁師・あるいは農民とやむなく結婚し、子供ももうけたあとで羽衣を発見して天に帰るのだが、能は天人を清純なままで昇天させるところに主張がある。
沖縄舞踊の組踊(くみおどり)、江戸時代の玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)作の『銘苅子(めかるしい)』は、この能の翻案であり、沖縄の羽衣伝説の舞踊化。長唄(ながうた)には、江戸期の『天人羽衣』、大正期の『新曲羽衣』があり、一中(いっちゅう)節に江戸期の『松の羽衣』があり、山田流箏曲(そうきょく)『松の羽衣』に発展する。常磐津(ときわず)では明治期の『松の羽衣』。歌舞伎(かぶき)の『羽衣』は、1898年(明治31)の初演で、宙乗りの技法も用いられ、市川家の歌舞伎十八番に対抗する、尾上(おのえ)家の新古演劇十種のうちに選ばれている。
武智鉄二(たけちてつじ)演出のヌード能(日劇ミュージック・ホールで行われた)にも『羽衣』があり、星新一のSF短編『羽衣』では、羽衣がタイムカプセルで過去の地球に観光にきた女性の宇宙服という設定となっている。
[増田正造]
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羽衣【はごろも】
(1)能の曲目。鬘物(かつらもの)。五流現行。作者不明。羽衣を漁夫に取られた天女の嘆きを伏線に,羽衣を得てからの歓喜の舞と,春霞のかなたへの昇天が,富士山と三保松原の景勝を背景に繰り広げられる。羽衣伝説を最も清純な形で脚色した能。(2)(1)に取材した歌舞伎舞踊(長唄)・常磐津節・一中節・箏曲の曲名。長唄(本来は常磐津節との掛合)は新古演劇十種の一つ。1898年初演。常磐津節(前曲とは別曲)は《松廼羽衣》。一中節は《松羽衣》と題し,山田流箏曲にも移曲。ほかに明治新曲の箏曲もある。なお,箏曲の組歌の同名曲は北島検校または牧野検校作曲。能とは無関係で六つの賀歌を並べたもの。
→関連項目組踊
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羽衣
うい
plumage
鳥類の体表をおおう羽毛の総称で,羽装ともいう。羽衣は通常年1回ないし2回の換羽によって新しくなる。ほとんどすべての鳥は繁殖が終ると完全な換羽を行う。この換羽によって得られる羽衣は,非生殖羽,冬羽,基羽などと呼ばれる。多くの鳥は繁殖の始る前にも完全あるいは部分的な換羽をする。この換羽によって得られた羽衣を生殖羽,夏羽,代羽などと呼ぶ。なお,ある種の鳥では生殖羽は換羽によらず,羽縁が摩耗することによって生じる。一般に生殖羽は非生殖羽より羽色がはっきりしており,また雌雄の差も顕著となる。羽衣の色は各種のディスプレイや個体同士の認識に重要な機能をもつ。一方,害敵から逃れるにあたって隠蔽色としての役割も重要である。
羽衣
はごろも
能の曲名。三番目物。作者未詳。漁夫白竜 (ワキ) は三保の松原で,松に掛かる衣を見つけ,持帰ろうとするが,天女に呼びとめられ,返してくれと懇願される。羽衣なしには再び天界に飛行できない天女を哀れみ,天人の舞を見せるならと返す。天女は羽衣を着け (物着) ,「駿河舞」のいわれを語り (クセ) ,袖を翻して (序の舞,破の舞) やがて天上する。のちに歌舞伎に移されて,延享2 (1745) 年1世瀬川菊之丞の『天人羽衣』や変化舞踊の『天人』となった (→羽衣物 ) 。
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普及版 字通
「羽衣」の読み・字形・画数・意味
【羽衣】うい
仙人の衣。道士。唐・白居易〔仙を夢む〕詩 坐して一白鶴に乘り に雙紅の旌を引く 衣忽ちにして飄飄(へうへう)たり 玉鸞(ぎよくらん)俄かにして錚錚(さうさう)たり字通「羽」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
はごろも【羽衣】
大分の麦焼酎。黒麹仕込みの醪(もろみ)を伝統的な木桶蒸留器で蒸留する。3年間熟成させた原酒をそのまま瓶に詰めて出荷。原料は裸麦、麦麹。アルコール度数36%。蔵元の「小手川酒造」は安政2年(1855)創業。作家・野上弥生子の生家としても知られる。所在地は臼杵市大字臼杵。
出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報
羽衣
〔常磐津, 長唄〕
はごろも
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 作者
- 河竹新七(3代)
- 演者
- 岸沢式左(6代)
- 初演
- 明治31.1(東京・歌舞伎座)
羽衣
(通称)
はごろも
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 元の外題
- 群三升団扇絵合 など
- 初演
- 慶応1.8(江戸・中村座)
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
羽衣〔金魚の体色〕
金魚の体色の名。青文魚(せいぶんぎょ)にみられる青が部分的に白く褪色したものをさす。
羽衣〔金魚の品種〕
金魚の一種。青文魚(せいぶんぎょ)のうち、腹部が白っぽく褪色したものをいう。
羽衣〔落語〕
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出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報