改訂新版 世界大百科事典 「ホッグジカ」の意味・わかりやすい解説
ホッグジカ
hog deer
Cervus porcinus
偶蹄目シカ科の哺乳類。胴が長くて背が丸く,四肢が短い,イノシシにやや似たアジア産の中型のシカの1種。体の毛はなめらかで褐色ないし黒褐色。首にはシカにあるようなたてがみ状の長い毛はない。雄には,長さ59cm以下の比較的短い枝角がある。体長105~115cm,肩高60~75cm,尾長約20cm,体重50kg前後。インド北部からミャンマー,タイ,インドネシアなどに分布。スリランカ,オーストラリアには移入され,野生化している。平地の川岸や州などの草やぶに,ふつう単独ですみ,他のシカ類のように跳ねて走らず,イノシシのように頭を下げ,草の間を縫うように進む。朝と夕方草を食べるが,この際には何頭かが集まることもある。暑い日中は丈の高い草の間に身を潜めて休む。視覚,聴覚,嗅覚(きゆうかく)いずれも鋭敏で,きわめて用心深く,人をめったに近づけない。交尾期は9~10月。雌は4~5月に1子を生む。子には白斑がある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報