改訂新版 世界大百科事典 「ボーベ地方慣習法書」の意味・わかりやすい解説
ボーベ地方慣習法書 (ボーベちほうかんしゅうほうしょ)
Coutumes de Beauvaisis
中世のフランスは,全王国に適用される共通法が存在しておらず,地方的慣習法分立の時代であった。これらの慣習法が公式に編纂されたのは15世紀末以後であるが,すでに13世紀以来,いくつかの私選慣習法書が出現した。《ボーベ地方慣習法書》は,《聖王ルイ法令集》や《いと古きノルマンディー地方慣習法書》と並び,その代表的なものである。著者は,ボーベ地方クレルモン伯領のバイイ(代官)などをつとめ,詩人としても知られるボーマノアールPhilippe de Beaumanoir(1250ころ-96)。全70章1982節から成るこの慣習法書は,1280-83年ころに編纂された。内容は,訴訟手続から遺言,相続,犯罪とその処罰,聖俗両界の裁判権など広範な領域を扱っており,聖王ルイ時代の北部フランスの社会状況を知る第一級の史料である。
執筆者:二宮 宏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報