改訂新版 世界大百科事典 の解説
ポピュレーションバランス
population balance
物質収支の一つで,年齢または滞留時間に注目したもの。原料粒子や分子などの集合系の挙動を解析するための方法をポピュレーションバランス法という。もともとの意味は人口の年齢分布が変化していくようすを解析するための概念と方法で,たとえば0歳から5歳までの間という人口が1年間にどう変わるか考えてみる。増える要因としては誕生があり,減る要因としては死亡がある。このほかに減る要因として加齢がある。つまり現在5歳の人は1年後には6歳になって,人口のこの階級の部分を去って隣の部分へ移ってしまうからである。ここで死亡がどんな法則に従っているかが重要である。死亡確率を年間1000人中何人で表すと,乳幼児では高く,青壮年期で低く,老年期になると年齢とともに上がっていく。このような死亡確率が与えられれば,ポピュレーションバランスの考えを使って人口年齢分布を求めることができる。この考えはほかの現象にも広く適用できる。たとえば死亡確率を退出確率におきかえて考えれば,パーティに来て楽しんでいる人の滞在時間分布に適用できる。同じようにして,化学反応装置に投入された原料粒子とか分子についても,この考えを適用できる。反応の進行にともなって反応性が変化したり,排出確率が変化するときはたいへん有効な考え方である。
→物質収支
執筆者:西村 肇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報