改訂新版 世界大百科事典 「ポリノジック繊維」の意味・わかりやすい解説
ポリノジック繊維 (ポリノジックせんい)
polynosic rayon fiber
ビスコースレーヨンを改質した再生セルロース繊維。レーヨンは絹に似せて作ったフィラメントが好まれていたが,しだいにその光沢が嫌われるようになった。そこで,長繊維としてよりもステープルとして多く使用されるようになったが,その際の競争相手は絹でなく綿である。レーヨンは綿と比べて強度とくに湿潤強度,弾性回復,堅さ,巻縮(けんしゆく)性,膨潤性などの性質で劣る。これらを改良したレーヨンがポリノジックレーヨンである。綿を構成するセルロースは2000~1万の重合度(アンヒドログルコースが2000~1万個結合して高分子を形成している)をもつが,レーヨンはそれが250~270と低い。ポリノジックは,原料の木材パルプがもつ高い重合度(約800)をなるべく低下させないように処理して紡糸することにより,重合度500~700をもつように再生された繊維である。綿のもう一つの特徴はミクロフィブリル構造をとっていることであるので,これを実現させるためと上記の重合度を落とさないようにするため,(1)アルカリセルロース溶液を老化させない,(2)ビスコース調製時,セルロースキサントゲン酸ナトリウムの濃度を低くし,かつ水酸化ナトリウムの濃度も下げる,(3)25℃という低温で1%硫酸を含む凝固浴に押し出して紡糸する,といういくつかの操作がビスコースレーヨンの製造法と異なるおもな点である。日本で1942年発明されたレーヨン〈虎木綿(とらもめん)〉が基礎になっている。性質は乾強度3.3g/デニール,湿強度2.5g/デニールとレーヨンより高く,乾伸度9%,湿伸度12%で,構造はミクロフィブリル構造であり,円形断面をとっている。
→再生繊維
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報