マクティーグ(読み)まくてぃーぐ(その他表記)McTeague

デジタル大辞泉 「マクティーグ」の意味・読み・例文・類語

マクティーグ(McTeague)

ノリス小説。1899年刊。もぐりの歯科医マクティーグが妻を殺害して破滅への道を突き進むさまを描く。米国における自然主義文学の先駆となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクティーグ」の意味・わかりやすい解説

マクティーグ
まくてぃーぐ
McTeague

アメリカの作家、ノリスの代表作。1899年刊。邦訳名『死の谷』。サンフランシスコの歯医者マクティーグは患者のトリナ・シェップと結婚するが、トリナの従兄(いとこ)マーカス・ショーラーによって無免許医であることを警察に密告され、職を失う。彼は堕落一途をたどり、遺伝による獣性をむき出しにして、酒におぼれ暴力を振るう。妻のトリナも遺伝と環境から異常な守銭奴に成り果てる。結局マクティーグは妻を殺し、金を奪って逃走する。彼は追跡するマーカスと「死の谷」で格闘するが、マーカスを殺したものの、ついに逮捕されてしまう。副題に「サンフランシスコの物語」とあり、カリフォルニアの地方色を生かした自然主義小説の古典といわれる。1924年、エーリヒ・フォン・シュトロハイム脚本・監督で映画化され、『グリード(強欲)』のタイトルで公開された。サイレント映画末期の自然主義リアリズムの名作として名高い。

[井上謙治]

『石田英二・井上宗次訳『死の谷』(岩波文庫)』

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世界大百科事典(旧版)内のマクティーグの言及

【ノリス】より

…サンフランシスコで記者となり,週刊誌《ウェーブ》で精力的に活躍したが,1898年海洋冒険小説《レディ・レッティ号のモラン》で注目され,ニューヨークに移った。ついで発表した《マクティーグ》(1899)では,遺伝と環境の力によって破滅する人間の姿を描き,自然主義文学の旗手となった。その作風にはゾラの写実的手法と,カリフォルニアの自然を背景にしたロマンス的要素も含まれ,〈小麦三部作〉の《オクトパス》(1901),《穀物取引所》(1903)でいっそう顕著になるが,第3部《狼》は未完に終わった。…

※「マクティーグ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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