グリード(読み)ぐりーど(英語表記)Greed

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリード」の意味・わかりやすい解説

グリード
ぐりーど
Greed

アメリカ映画。1924年作品。監督エリッヒ・フォンシュトロハイム。26年(大正15)日本公開。フランク・ノリスの小説『マクティーグ』(1899)をもとに、シュトロハイム自身がシナリオを書いている。炭坑で働いていたマクティーグ(ギブスン・ゴーランド)が巡回歯科医の見習いをやり、都会へ出て無免許のまま開業し、トリナ(ザス・ピッツ)と知り合い結婚する。しかし、トリナは守銭奴と化し、結婚生活も破綻(はたん)、妻を殺したマクティーグも砂漠で死に直面するという物語。『愚かなる妻』(1921)で異色の才能を発揮したシュトロハイムの代表作であり、サイレント映画の秀作の一つとされる。庶民のなかのあさましい「貪欲(どんよく)」を直視した悲劇で、人間の性情や欲望の醜さを生々しく描写した。ただし、42巻、9時間半にも及ぶ上映時間のため、一般には10巻2時間強の短縮版が公開された。描写は一般にいわれているようなリアリズム一辺倒ではなく、誇張、滑稽(こっけい)味、象徴、シュルレアリスムなどの手法もみられ、描写には厚みがある。

[岩本憲児]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グリード」の意味・わかりやすい解説

グリード
Greed

アメリカ映画。メトロゴールドウィンメイヤー MGM 1924年作品。監督,脚本エリッヒ・フォン・シュトローハイム。主演ギブスン・ゴウランド,ザス・ピッツ。原作フランク・ノリス。赤裸々なリアリズムでサイレント映画史上最も有名な作品の一つ。鉱山町背景に,歯科医から転落した飲んだくれ,その強欲な妻,恋がたきの男,3者の物欲と殺し合いを描き出し,ことに大づめの砂漠での男たちの死闘は強烈な印象を与えた。シュトローハイムの傑作だが,47巻という長さのため公開にあたって 10巻に縮められ,それでも興行的には失敗した。しかし,性格や環境描写に優れたこの作品の映画芸術への影響はきわめて大きい。

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