日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュトロハイム」の意味・わかりやすい解説
シュトロハイム
しゅとろはいむ
Erich von Stroheim
(1885―1957)
アメリカの映画監督、俳優。9月22日オーストリアのウィーンに生まれる。経歴は定かでないが、本名はエーリヒ・オズワルド・シュトロハイム、父親はユダヤ人の帽子製造業者というのが真相らしい。遅くとも1909年までには渡米しており、1914年ハリウッド入りをして大監督グリフィスの映画に出演。1919年には監督第一作『アルプス颪(おろし)』を発表した。三角関係の微妙な心理描写はハリウッド映画にかつてないリアリティをもたらし、批評、興行両面での成功を収めた。続いて『悪魔の合鍵(あいかぎ)』(1920)、『愚かなる妻』(1922)を発表、とくに後者は彼の才能が十分に発揮されており、この映画における自然主義描写は大作『グリード』(1924)で頂点に達した。しかし、飽くことなき完璧(かんぺき)主義、常識を超える長尺化と予算超過、感傷を拒否した露悪的人間観察はハリウッドの製作傾向とあわず、『グリード』も『結婚行進曲』(1927)も短縮版のみが一般公開された。ほかに『メリー・ゴー・ラウンド』(1923。共同監督)、『メリー・ウイドー』(1925)、出演作に『大いなる幻影』(1937)、『サンセット大通り』(1950)など。1957年5月12日フランスのモールパで没す。
[岩本憲児]
資料 監督作品一覧
アルプス颪 Blind Husbands(1919)
悪魔の合鍵 The Devil's Passkey(1920)
愚なる妻 Foolish Wives(1922)
メリー・ゴー・ラウンド[ルパート・ジュリアンとの共同監督] Merry-Go-Round(1923)
グリード Greed(1924)
メリー・ウイドー The Merry Widow(1925)
結婚行進曲 The Wedding March(1927)
アルプスの悲劇 The Honeymoon(1928)
クィーン・ケリー Queen Kelly(1929)