日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリ・ド・フランス」の意味・わかりやすい解説
マリ・ド・フランス
まりどふらんす
Marie de France
生没年不詳。12世紀フランスの女流詩人。イギリス王ヘンリー2世(在位1154~89)の宮廷で著作をする。傑作『物語詩(レー)』Lais12編(1170ころ)のほか、フランス最初のイソップ物語『寓話(ぐうわ)集』Fables(1180ころ)と彼岸(ひがん)の世界へのラテン語旅行記の翻訳『聖パトリスの煉獄(れんごく)』L'Espurgatoire Saint Patrice(1189以後)がある。短編『物語詩』には騎士と妖精(ようせい)の恋など神秘的なケルト世界が登場するが、感覚的、具体的に物事をとらえようとするマリは、戦争や流血を伴う武勲は愛の危険な敵と考えており、また姦通(かんつう)に対する非難もみられ、その点で同時代の男性作家とは異なっている。
[鷲田哲夫]