改訂新版 世界大百科事典 「ミズネズミ」の意味・わかりやすい解説
ミズネズミ (水鼠)
water rat
多くのものが水生に適応している齧歯(げつし)目ネズミ科ミズネズミ亜科Hydromyinaeの哺乳類の総称。オーストラリア,ニューギニア,フィリピンに分布。体の大きさは変異に富み,体長8~35cm,尾長8~35cm,体重17~1300g。臼歯(きゆうし)は単純で鉢形を呈し,上下顎(じようかがく)の第3臼歯はないか,または痕跡的である。水生のものでは後足に水かきが発達する。13属約20種よりなる。
もっとも代表的なのはオーストラリアミズネズミ(オオミズネズミ,ビーバーネズミ)Hydromys chrysogasterで,オーストラリア,タスマニア,ニューギニアなどに分布する。本種の体は巨大で,体毛は密で柔らかい。体の背面は暗褐色からほとんど黒色,金茶色あるいは暗灰色まであり,腹面は褐色から黄白色あるいは橙色まで変化する。尾の先は白い。川,沼,湿地にすみ,岸辺の穴や樹洞を巣とする。一日中活動するが,とくに夕刻に活発で,水底に沿って泳ぎながら,魚や水生昆虫を口でとらえる。繁殖期はオーストラリアでは春と夏で,雌は約3回出産し,1産1~7子,ふつう3~5子を産む。50年ほど前から毛皮をとることを目的に狩猟されている。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報