改訂新版 世界大百科事典 「ミチバシリ」の意味・わかりやすい解説
ミチバシリ (道走)
roadrunner
ホトトギス目ホトトギス科ミチバシリ属の鳥2種の総称。この仲間はもっとも地上生活に適応していて,英名も和名も,地上を走ってトカゲなどの獲物をつかまえるところからつけられた。全長約60cmのオオミチバシリGeococcyx californianusはアメリカ南西部からメキシコに,全長約50cmのコミチバシリG.veloxはメキシコ南部から中央アメリカにかけて分布する。羽色は,2種とも上面は灰褐色に白色,黒色の斑があり,腹は白い。尾は長くくちばしも細く長い。頭には冠羽があり,興奮すると立てる。
半砂漠地帯に生息している。気温の高い日中は日かげで休み,朝夕の涼しいときに歩き回って,大型昆虫,サソリ,ヘビ,ネズミなどの小動物をつかまえる。獲物を追うときは時速20kmをこえる速さで走り,尾や翼をたくみに動かして急カーブをきる。飛ぶことはめったにない。巣は低いやぶの中に小枝を編んでつくり,1腹3~6個の卵を産む。ヘビ,とくに毒ヘビを殺すこともあり,〈魔術をつかう冷酷な殺し屋〉と呼ばれたりする。実際は,昆虫を多く食べている。ヘビを殺すときは,すばやくまわりを回りながらくちばしで何度も突いて弱らせ,最後にはくちばしで地面にたたきつける。オオミチバシリはニューメキシコの州鳥に選ばれている。
執筆者:竹下 信雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報