ミッレト(その他表記)millet

翻訳|millet

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ミッレト」の解説

ミッレト
millet

トルコ語で宗教共同体,民族,国民のこと。語源信仰共同体や宗教を意味するアラビア語のミッラオスマン帝国では,非ムスリムであっても一定の制約のもとでジズヤ(人頭税)を納めればジンミー(被保護民)としてみずからの信仰,言語,慣習を保持することが認められていた。彼らはギリシア正教徒,アルメニア教徒,ユダヤ教徒のミッレトに大別され,ミッレト・バシュという指導者がオスマン政府に対して集団内の統制納税に責任を負う形で内部自治権が与えられていた。ミッレトは近代になると「ネーション」の同義語として定着し,オスマン帝国末期にはもっぱら民族という意味に用いられたが,トルコ共和国においては国民,国家をさすようになった。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ミッレト」の解説

ミッレト
millet

特にオスマン帝国が自治・信仰を認めた非イスラームの宗教別共同体
アラビア語の「宗教」(ミッラ)に由来。元来イスラームの伝統では,異教徒のうちユダヤ教徒やキリスト教徒などの「啓典の民」には,貢納義務と引き換えに,保護を与え自治を認めるジンミー制度があり,非ムスリムと共存してきた。オスマン帝国の「ミッレト」の語は,当時の史料にはみられず,むしろ従来の伝統を継承したものと考えるのが妥当である。オスマン帝国は,ギリシア正教,アルメニア教会,ユダヤ教の3会派のミッレトを重視して貢納を条件に自治と信仰を認めたが,これは多宗教との共存が求められるオスマン帝国の性格を表している。

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