日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジンミー」の意味・わかりやすい解説
ジンミー
じんみー
dhimmī
イスラム世界に居住する、保護された非ムスリムをさす。厳密には、『啓典の民』(アフル・アル・キターブ)、すなわち、キリスト教徒、ユダヤ教徒だけがジンミーとして認められるが、実際にはイランではゾロアスター教徒、インドではヒンドゥー教徒もジンミーとして待遇された。ジンミーはジズヤ(人頭税)の支払いが義務づけられているかわりに、生命・財産の安全と信仰の自由が保証された。しかし、新しい教会やシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)の建築、ムスリム女性との結婚は禁止されている。また武器の携帯や乗馬は望ましくなく、特別な腰帯や帽子を目印として着用することが望ましいとされた。しかし、実際には、ジンミーの処遇は為政者によってかなりの違いがあり、ジンミーが政治的・経済的に重要な役割を果たした時代もあれば、差別的な待遇を受け苦しんだ時代もあった。
[竹下政孝]