日本大百科全書(ニッポニカ) 「みなし否決」の意味・わかりやすい解説
みなし否決
みなしひけつ
衆議院で可決し参議院へ送付された法律案について、参議院が60日以内に議決しない場合、衆議院は「参議院は否決した」とみなすことができる規定。60日ルールともいう。衆議院の優越規定の一つで、日本国憲法第59条第4項に規定されている。みなし否決とされた法律案が、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再可決された場合には、法律となる。みなし否決に必要な60日間には、国会の休会期間は含まれない。みなし否決を適用できるのは同一会期中に限られ、複数の会期にまたがっては適用できない。
日本国憲法第59条第2項には、衆議院と参議院の議決が異なった場合、衆議院がふたたび出席議員の3分の2以上の多数で再可決すれば、その法律案は法律となると定められている。しかし、参議院が法案審議を引き延ばすなどして法案成立を阻止することが想定される。これを防ぎ、衆議院での再可決を可能にするための規定が、みなし否決である。予算案、条約承認、内閣総理大臣指名については、衆議院と参議院が異なる議決をした場合、衆議院の議決が一定期間後(予算案と条約承認は30日、内閣総理大臣指名は10日)に自然成立する。これに対し、みなし否決には、衆議院で「参議院が否決したとみなす動議」が提出され、過半数で同動議が可決される必要がある。参議院で採決が行われ、可決または否決された場合には、みなし否決とはよばない。
過去にみなし否決を適用した法律案で再可決されたのは、国立病院を地方自治体へ払い下げる手続きを定めた国立病院特別会計所属資産譲渡特別措置法案(1952年7月30日)、ガソリン税などの暫定税率を復活させる改正租税特別措置法案(2008年4月30日)、一票の格差を是正する衆議院小選挙区区割り法案(2013年6月24日)の3例のみである(2013年時点)。
[編集部]