改訂新版 世界大百科事典 「ミニステート」の意味・わかりやすい解説
ミニステート
mini-states
領土面積,人口がきわめて小さい国家のこと。ヨーロッパにおいて歴史的に形成されてきたモナコ,リヒテンシュタインなどを除くと,ほとんどが第2次大戦後にアフリカと南太平洋,インド洋地域に成立した諸国である。大国が軍事力を中心とする国力の大きさによって伝統的に国際政治に影響を及ぼしてきたのに対し,ミニステートにはそのような影響力をもつ条件は存在しない。にもかかわらず現代の国際政治におけるミニステートの影響力は強まりつつあるといえよう。その理由の第1は,領土,人口の小ささにもかかわらず,主権国家である以上,国連など多くの国際機関では大国と平等の投票権をもつことである(加重投票制をとる世界銀行,IMF等は除かれる)。第2に,ミニステートの成立そのものが民族自決の権利,運動の成果であり,植民地や保護国と比べ,大国に対する政治的自立性が高いことである。たとえば,人口50万に満たないモルジブ共和国は,インド洋の戦略的要衝にあるにもかかわらず,独立以来米ソに対する中立政策を維持してきた。また,大国の軍事的支配から離脱することを目的としたミニステートをめざす運動もある。アメリカ軍基地と核廃棄物投棄に抵抗する北マリアナ連邦やベラウ共和国の運動が,その例に数えられる。
執筆者:藤原 帰一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報