日本大百科全書(ニッポニカ) 「加重投票制」の意味・わかりやすい解説
加重投票制
かじゅうとうひょうせい
Weighted Voting System
国際機構における各機関の表決に関しては、構成員間の投票権の平等の立場から、各構成員は一票を行使するのが通例である。しかしある種の国際機構においては、一定の規準に従って、それぞれ異なる票数の投票権を各構成員に与えているものがある。これを加重投票制という。この制度の趣旨は、採択された決議が真に実効性を発揮するには、表決は単に形式的平等主義ではなく、構成員の責任や貢献の程度、利害関係の大小に応じて発言権の比重に差異を設ける必要があるということにある。加重投票制の基礎となる規準は、それを採用する機構によって一様ではない。国際復興開発銀行や国際通貨基金では、運用資金に対する加盟国の寄与額が規準となる。国際砂糖理事会や国際小麦理事会では、輸出国群と輸入国群に平等に与えられた一定数の票が、当該商品の輸出入実績に応じて各国に割り当てられる。地域的機構であるヨーロッパ共同体は独自の票数割当てを行っている。国際連合では、国家平等のたてまえから総会をはじめとする各機関の表決は、国の大小を問わず一国一票主義がとられている。ただ安全保障理事会では、5常任理事国に対していわゆる拒否権が与えられており、常任理事国と非常任理事国との間に質的な差別が設けられている。この意味では安全保障理事会に関する限り、一種の加重表決の制度が存在するということもできる。
[香西 茂]