日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミミズアナゴ」の意味・わかりやすい解説
ミミズアナゴ
みみずあなご / 蚯蚓穴子
worm eels
硬骨魚綱ウナギ目ウミヘビ科ニンギョウアナゴ亜科ミミズアナゴ属Scolecenchelysおよびミナミミミズアナゴ属Muraenichthysの総称、またはそのなかの1種。両属は、前鼻孔(ぜんびこう)と後鼻孔の間に2個の側線孔が開き、後鼻孔が吻(ふん)の下面にあるミミズアナゴ属と、側線孔が1個で、後鼻孔が吻の側面にあるミナミミミズアナゴ属に分けられる。さらに、日本の魚類研究者の日比野友亮(ひびの ゆうすけ)(1988― )と木村清志(きむらせいし)(1953― )によって、ミミズアナゴ属は背びれ始部が肛門(こうもん)より前にあるS. macroptera種群と、後ろにあるS. gymnota種群に分けられた(2016)。彼らによると、日本近海には前種群からクリミミズアナゴS. macropteraとツマグロミミズアナゴ、後種群からミサキウナギ、ノドグロミミズアナゴS. fuscogularis、サンゴミミズアナゴS. iredalei、フトミミズアナゴS. laticaudataおよびミミズアナゴS. gymnota、そして別属のミナミミミズアナゴM. schultzeiとワカウナギM. hattaeの2種を加えて合計9種が分布する。なお、従来日本から知られていたニホンミミズアナゴM. japonicus、オカムラウミヘビM. okamuraiおよびキタノウミヘビS. borealisはミサキウナギと同種とみなされた。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]
代表種
ミミズアナゴ(英名slender worm eel)は日本では沖縄県糸満(いとまん)市付近の海域から知られているが、インドネシア、マーシャル諸島、サモア諸島など太平洋、南アフリカ、モザンビークなどのインド洋に広く分布する。体はほぼ円柱状で細長く、吻は鋭くとがり、その下面の中央に溝がない。後鼻孔は吻の下面に開く。口裂は目の後縁のわずかに後方に達する。上顎(じょうがく)の歯は前半部で2列、後半部で1列。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は1列。胸びれはない。尾びれは背びれと臀(しり)びれの後端とつながる。背びれの始部は肛門よりも後方にあり、肛門との間の垂直線の距離は頭長の12~55%。肛門前の側線孔数は49~53。最大全長は16センチメートルになる。浅海の砂底域にすむ。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]