日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツマグロミミズアナゴ」の意味・わかりやすい解説
ツマグロミミズアナゴ
つまぐろみみずあなご / 端黒蚯蚓穴子
black tailed worm eel
[学] Scolecenchelys fuscapenis
硬骨魚綱ウナギ目ウミヘビ科に属する海水魚。土佐湾と新潟県の沿岸からとれている。体は円柱状で細長く、後方に向かって細くなり、後方で側扁(そくへん)する。頭部は小さく、全長の11分の1~13分の1。肛門(こうもん)前長(吻端(ふんたん)から肛門までの長さ)は全長のおよそ3分の1。尾部は著しく長く、全長の65~67%。吻はとがり、腹面の溝が短くて、前鼻孔(ぜんびこう)の中央から前縁まで伸びる。下顎(かがく)前端は前鼻孔の前縁に達する。前鼻孔は管状で、眼径の約2分の1。後鼻孔は目の前方にあり、上唇の内側に開く。眼径は両眼間隔幅に等しい。口は目の後縁の下まで開く。上下両顎と鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に多くの小さくて細長い円錐歯(えんすいし)があり、上顎に3列、下顎に2列に並ぶ。また、前上顎骨(左右の主上顎骨の前端の間にあり、鋤骨の前に位置する骨。間(かん)上顎骨、前上顎骨・篩骨(しこつ)などともいう)に7本、鋤骨に17~22本の歯が不規則に並ぶ。背びれと臀(しり)びれは非常に低く、背びれは肛門より頭の長さ(全長の11分の1~13分の1)ほど前から、臀びれは肛門直後から始まり、尾端で尾びれとつながる。胸びれと腹びれはない。脊椎骨(せきついこつ)数は多くて157~162。体は黄褐色で、背側面はより暗色が強い。尾部の後半分は一様に黄褐色。背びれ、臀びれ、尾びれは透明で、尾端部は明瞭(めいりょう)に黒い。腹膜の背表面には細かな暗色点が散らばる。全長は37センチメートルほどになる。水深112~269メートル以浅の沿岸の砂泥底域にすむ。尾部の黒色素胞(こくしきそほう)は、穴を掘るために使う尾部を強化するのに役だっていると考えられている。この種は2012年に記載された深海性のミミズアナゴ属魚類で、底引網でまれに漁獲される。食用価値はない。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]