ミリシア運動(読み)ミリシアうんどう(英語表記)militia movement

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミリシア運動」の意味・わかりやすい解説

ミリシア運動
ミリシアうんどう
militia movement

アメリカ合衆国における過激な武装組織による政治運動。参加者は一般に,政治をきわめて陰謀論的に解釈し,みずからを政府弾圧に抗する伝統的な自由の擁護者とみなす。これまでに,1930年代半ばのファシスト団体と「黒シャツ」運動の提携や,1960年代初めの武装右翼団体「ミニットマン」などの例がある。1970年代後半には,州法が民兵や武装組織を違法としているにもかかわらず,およそ 40の州で新たなミリシア組織が設立され,活発に活動した。そのなかにはファシズムアンチ・セミティズムなどの人種差別主義を信奉し,ネオ・ナチズムの宣伝拡大をはかったものなどがある。また,郡より上のあらゆる政府を否定するという,逸脱的な憲法理論を掲げるミリシア組織もあった。その後,サバイバリスト,「コモン・ロー運動」のメンバー,白人優位主義者,納税や妊娠中絶に反対する武装集団などさまざまな反政府グループが結集して「愛国運動」を形成,その同調者は数百万人にも上ったとみられる。しかし 1995年4月19日,ミリシア運動に共鳴したティモシー・マクベイが大量の自家製爆弾でオクラホマシティー連邦ビルを爆破し,168人の死者を出すと,アメリカ国民の多くはこの事件を,ミリシア組織が扇動する妄想的な反政府思想が行き着いた結果と受け止めた。一般国民の反感と政府の取り締まり強化が相まって,ミリシア運動の勢力規模はしだいに衰え,団体数は 21世紀初頭に約 200にまで減少している。

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