日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムツエラエイ」の意味・わかりやすい解説
ムツエラエイ
むつえらえい / 六鰓鱝
軟骨魚綱トビエイ目の科や属の総称、またはその1種の名称。ムツエラエイ科Hexatrygonidae(英名sixgill stingrays)はムツエラエイ属HexatrygonのムツエラエイH. bickelli(英名sixgill stingray)1属1種からなる。ほかのエイ類はすべて鰓孔(さいこう)が5対(つい)であるが、本種は6対あり、きわめて特異である。深海性のエイのため体は柔軟で、目が小さく、感覚器を多数有する吻部(ふんぶ)は長大である。尾部には強大な尾棘(びきょく)をもち、ウスエイ科Plesiobatidae、ヒラタエイ科Urolophidaeなどと近縁と考えられている。おもに水深360~1120メートルに生息するが、ときに水深30メートルほどの浅海にも現れる。全長1.1メートルほどで成熟し、1.7メートルになる。生殖方法は非胎盤型の胎生で、胎仔(たいし)は自分の卵黄を吸収してしまうと母体から栄養を受けて成育する。1尾の雌から3尾の胎仔が確認されており、産まれるときの大きさは約48センチメートルである。南日本、中西部太平洋、インド洋から知られている。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年8月時点)。
[仲谷一宏 2021年9月17日]