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真珠 しんじゅ pearl

翻訳|pearl

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

真珠
しんじゅ
pearl

パール。アコヤガイクロチョウガイシロチョウガイカラスガイなど,貝殻の内側が真珠層になっている貝 (→真珠貝 ) の中に異物が入った場合,これを取巻いて形成される球状の真珠質の凝固物をいう。

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デジタル大辞泉の解説

しん‐じゅ【真珠】

アコヤガイシロチョウガイなどの体内にできる球状の物質。体内に入り込んだ異物に分泌液が層状に沈着して作られる。天然に産するが、養殖も盛ん。銀白色の光沢があり宝石として珍重される。パール

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百科事典マイペディアの解説

真珠【しんじゅ】

おもにアコヤガイ,クロチョウガイなどの二枚貝の体内に生ずる球状のかたまり。体内に入った異物が刺激となって,外套(がいとう)膜から分泌された炭酸カルシウム主成分とする真珠質がその異物を核として真珠嚢中に形成される。
→関連項目アコヤガイ貴石クロチョウガイ誕生石宝石

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世界大百科事典 第2版の解説

しんじゅ【真珠 pearl】

アコヤガイなどの貝類の体内に,その貝殻と同質の炭酸カルシウムを主成分として形成された球状あるいは不定形の物質をいう。農水省では,(1)真珠養殖事業法にいう真珠とは,生きた真珠貝の中で球状または半球状(多少の変形を含む)に形成される代謝生産物であって,かつ,この外見しうる部分の主たる構成物質が,真珠貝の真珠層と等質であるものをいい(その内部に貝殻質から作られた核を含むか否かは関係ない),(2)この場合,真珠貝中におけるその形成契機に,まったく人為的な要因を含まないものを天然真珠といい,その契機を人為的に与えられるものを養殖真珠というと定めている。

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大辞林 第三版の解説

しんじゅ【真珠】

貝類の殻の中にできる光沢のある玉。炭酸カルシウムが主成分。貝の体内に侵入した砂粒などの異物を、外套膜がいとうまくから分泌された真珠質が包んでできる。美しい銀色で、古くから装飾品として愛好される。アコヤガイを使って人工的に作る養殖法が有名。パール。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

真珠
しんじゅ
pearl英語
perleフランス語
Perleドイツ語

貝類の体内にできる炭酸カルシウムを主成分とする異常分泌物で、さまざまの形状をしているが、通常、宝玉(ほうぎょく)として用いられるものは、球状または半球状が多い。[和田克彦]

真珠の起源

真珠は古来、貝類を食べる民族にみいだされ、古くより宝玉として広く用いられたものと思われる。天然真珠は種々の貝類に生じるが、実際に装飾品として用いるものは、ごくまれにしかとれず、また貝の種類もそう多くはない。一般に貝殻の内側に光沢のある色のよい層(真珠層)をもっている貝から生じるものが優れており、そのような貝は、淡水産ではイケチョウガイ、カワシンジュガイ、カラスガイ、ドブガイなど、また海水産ではアコヤガイ、シロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイ、アワビなどが代表的な種である。[和田克彦]

真珠の成因

真珠がどのようにしてできるかは、古くから多くの人の関心事で、さまざまな説が唱えられてきた。それらは大きく分けて、体外から異物が侵入しそれが核となって真珠ができるという説と、貝殻を形成する外套膜(がいとうまく)の上皮細胞が分離して体内の結合組織の中に侵入することがおもな成因とする説である。前者は、真珠の生成にはなんらかの核が必要であるとするもので、たとえば吸虫などの寄生虫が体内に入りその周りに真珠層が被包したとする。このほかに核となるものとしては砂粒や受精しない卵細胞なども考えられた。また、後者の説は、真珠の生成には核は必要でなく、外套膜の上皮細胞が自然に分離して体内に陥入した結果であるとする。これらいずれの説においても、真珠の生成された場所には薄い上皮細胞からなる真珠袋(ぶくろ)という組織があることがわかってきた。すなわち、真珠はこの真珠袋の上皮細胞から分泌される真珠層などによって形成される。真珠袋は、外套膜が貝殻を形成するのと本質的には同じ方法で真珠を形成する。核となる物質と外套膜上皮細胞の必要性の研究は、のちに真珠養殖における移植技術の完成に発展する。天然真珠の場合、真珠袋がいかなる刺激で体内に形成されるかによって真珠の成因が異なることになる。外套膜以外の組織の細胞がなんらかの刺激によって形態的・機能的転換をおこして真珠袋を形成するという説もある。真珠の形成される部位や形態および構造が一定でないので、それら真珠の性状によって、真珠の成因はさまざまの内的および外的要因の単一あるいは複合作用であると考えられる。[和田克彦]

真珠の種類

真珠はその形態や色つやの美しさゆえに、また養殖真珠が量産されるまでは天然真珠としての希少性から尊重された。真珠には次のような種類がある。[和田克彦]
天然真珠
貝類に自然に生じた真珠を総称して天然真珠とよんでいる。古来、宝玉として珍重され、とくに東洋において多く発見され市場に出た。貝体にできる位置によって貝付真珠と遊離真珠とがある。前者は貝殻真珠、殻付真珠、半円真珠とも称し、貝殻の内側に突起としてできたものである。後者は真の真珠で、貝殻から離れて貝の体内に生じたもので、その発生部位によって、袋(ふくろ)真珠、蝶番(ちょうつがい)真珠、筋肉真珠の呼び名がある。天然真珠の形はいろいろであるが、球形のものは少なく不整形が多い。また、大きさもケシ粒大から数十ミリメートルのものまであるが、大部分は「ケシ」とよばれる小さなものである。[和田克彦]
養殖真珠
天然真珠の希少性や良質大珠(おおだま)の少ないことなどから、真珠形成の原理を応用して、人為的に貝類に発生させた真珠である。真珠を生成する貝類であって人為的な増殖に適した種類が用いられている。淡水産としてはイケチョウガイ、海水産としてはアコヤガイ、シロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイ、アワビが用いられている。イケチョウガイは主として琵琶(びわ)湖や霞ヶ浦(かすみがうら)で無核真珠および一部有核の真珠が養殖されている。日本で生産される養殖真珠でもっとも多いのがアコヤガイによるもので、この貝は古くからシンジュガイ(真珠貝)として知られているものである。アコヤガイは温帯から熱帯にかけて分布し、日本はその北限にあたり、実際の養殖は西日本以南で行われている。シロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイは熱帯産で、アコヤガイより大形の貝で、それからできる真珠も大形である。マベガイでは貝付真珠(半円真珠)が生産されている。[和田克彦]
模造真珠
天然真珠や養殖真珠のもつ魅力を人工的につくりだそうとして、貝類を用いることなく、真珠光沢を発する物質を核に塗ったものが模造真珠である。生物によることがない工業製品で、人造真珠という語も用いられる。炭酸鉛とプラスチック製核を用いたものが多くつくられている。かつてよく用いられたタチウオなど魚の鱗(うろこ)に含まれる色素グアニンは、現在ではほとんど用いられていない。[和田克彦]

真珠の性質

天然真珠や養殖真珠の光沢は、真珠を構成する要素のうち、真珠層とよばれる部分によるもので、このことは本質的には貝殻内面の真珠光沢と同じである。この真珠層は炭酸カルシウムとコンキオリンとよばれる有機物からなり、煉瓦(れんが)造りのような結晶構造をしている。炭酸カルシウムの結晶には同質異形体としてあられ石(アラゴナイト)と方解石(カルサイト)があり、前者は美しい真珠光沢があるが後者にはない。
 真珠特有の美しい光沢は、アラゴナイトの板状結晶と、その間を埋めるコンキオリンの薄層が同心円状に重なる構造によるものである。光がこの層状構造を通る際に干渉作用をおこして美しい色を発する。このアラゴナイトの鉱物薄板の厚さは種によって異なるが、アコヤガイの場合で約0.5ミリミクロンである。
 貝殻や真珠のカルサイトは、稜(りょう)柱層とよばれて真珠光沢がない。稜柱層のみからできた真珠が稜柱層真珠で、商品としての価値はない。また、有機質のコンキオリンが表面に分泌されたものが有機質真珠で、これも価値はない。これら異常真珠に対して、真珠層が表面に発達した本来の商品としての真珠を真珠層真珠という。真珠層の内側に稜柱層や有機質あるいはケシを含むものもあり、これらは複合真珠とよばれる。
 真珠はほかの宝石類と異なりそれほど硬くなく、モース硬度計で3.5~4.5である。また、炭酸カルシウムの結晶からなるため酸に弱く、汗などが付着した際には掃除する必要がある。[和田克彦]

真珠養殖の歴史

天然真珠は数が少なく、良質のものは希少であるために、古くから真珠を人為的に大量に生産しようとする試みがなされてきた。
 中国ではすでに11世紀ごろから淡水産ドブガイ類を用いて、貝殻と外套膜との間に仏像などの形をした物体を挿入するという方法で、貝付真珠がつくられていたという。また、ヨーロッパでも1761年スウェーデンのリンネCarl von Linnは、カワシンジュガイの貝殻の外側から穴をあけ、金属線の先端につけた石灰球を外套膜に触れるように挿入し、真珠を形成させた。これらの方法は真珠の成因がまだ不明な時代においては画期的なことであり、その後の真珠形成や真珠養殖の研究の発展の契機となった。
 貝付真珠から一歩前進して、遊離した真円(しんえん)の真珠を体内に形成させる試みが、その後多くの人々によって行われた。1895年(明治28)御木本幸吉(みきもとこうきち)は、アコヤガイを用いて貝付真珠をつくる方法の特許を得て、真円真珠を得る研究を行っていた。真円真珠の人工養殖の基礎ができたのは1906~08年(明治39~41)ごろで、それは見瀬辰平(みせたつへい)、西川藤吉(にしかわとうきち)、御木本幸吉らの功績である。いずれもアコヤガイを用いて、核となる物体を挿入する方法であった。すなわち、1907年見瀬辰平は、注射針を用いて外套膜組織内に微粒の核を挿入して遊離真珠を形成する特許を得た。また、これよりわずかのちに西川藤吉は、真珠袋を構成させるために、外套膜組織を切り取ってこれを核とともにほかの貝に挿入して真珠を形成する方法の特許を得た。御木本幸吉も1916年(大正5)に「全冠式(ぜんかんしき)」とよばれる独特の真円真珠の養殖に関する特許を獲得している。このように、外套膜の一片を核に沿って生貝の中に挿入する方法や、さらに貝を海底でなく中層に垂下して飼育する方法など、現在の技術の基礎がこのころにできた。その後、多くの技術者の努力により、手術の方法や、それに用いる道具などの技術の改善がなされ、日本の真珠養殖の発展をみることになる。[和田克彦]

真珠養殖の技術

主としてアコヤガイで技術が発達した日本の真珠養殖も、現在ではシロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイ、アワビ、イケチョウガイなどの種でも、産業としての真珠養殖が行われるようになった。[和田克彦]
アコヤガイによる養殖
真珠を生産するための貝を「母貝(ぼがい)」といい、これは母貝養殖業によって養成される。母貝業者は稚貝を採取する採苗業者からアコヤガイを購入するが、これらを兼業する場合もある。アコヤガイは6、7月の夏季に産卵し、海中で体外受精した卵は孵化(ふか)して幼生となり浮遊生活期を過ごし、約20日から1か月で稚貝として水中の物体に付着する。採苗は、この時期にスギの葉を海中に垂下して稚貝を付着させて採取する。これが天然採苗とよばれるものであるが、最近は室内の水槽内で採卵および幼生飼育を行う技術が発達し、天然よりは早い時期(春~初夏)に採苗する人工採苗法により生産される稚貝がみられるようになり、その数が年々増加している。また、天然採苗の可能な地域も狭くなってきており、採苗場は、愛媛、高知、大分、長崎の各県など四国や九州の一部に限られてきている。
 アコヤガイは、天然では海底の岩礁に付着して生息するが、養殖は、プラスチック製の養殖籠(かご)に入れて海の中層に垂下して行われる。養殖籠は主として化繊網製で、三角錐(すい)形の「提灯(ちょうちん)籠」、円柱形の「丸籠」、袋形の「吹き流し」、トランク形の「段籠」など、成育段階や管理方法によってさまざまのものがくふうされている。これらの養殖籠を垂下するために筏(いかだ)が用いられるが、これにも竹筏、木筏、延縄(はえなわ)式などがあり、用途や養殖場の条件によって使い分けられている。養殖籠は、普通、海面より約2メートルの深さに垂下される場合が多く、赤潮や淡水などの影響の出る場合に、垂下深度を変えて貝の衰弱や死亡を防ぐ。養殖場は外洋に面した波の静かな内湾で、水温、塩分濃度、水深などが適当な所が選ばれている。
 生後2、3年のアコヤガイに挿核手術が行われる。核を入れられる母貝はまず「仕立て」とよばれる処理によって、手術に耐えうる生理状態にされる必要がある。これは手術という侵襲に対して貝が防御能力を備えるように生活機能を抑制する作業である。すなわち、生殖腺(せん)中の卵や精子を放出させるいわゆる「卵抜き」、あるいは卵巣や精巣の発達を抑える「卵止め」という操作が中心となる。実際には、卵抜き籠とよばれる竹あるいはプラスチック製の籠に、収容密度を高くして入れ、垂下深度を変えたり、手入れを頻繁に行うなどの方法がとられている。
 挿核手術は、核と外套膜の細片(ピースとよばれる)を生殖腺内に挿入することである。核は、中国や北アメリカから輸入された淡水産ドブガイ類の貝殻からつくられ、製核業者により種々の直径のものが製造されている。ピースは別の貝の外套膜先端部をメス(小刀)で約2ミリメートル四方の細片に切ってつくる。手術は、貝殻を開殻器により開け、メスで足と生殖腺の間の部分から切開し、ピースを「細胞オクリ」という器具で、核を「珠オクリ」という器具で挿入する。挿核手術は真珠養殖のなかで、もっとも熟練を要する技術である。挿核された貝は養生籠とよばれる四角の籠に収容して休養させる。その後、普通の養殖籠(段籠または吹き流し)に移して養殖場の筏に垂下する。
 稚貝、母貝、挿核貝ともに、養殖の間には貝殻に種々の生物が付着し繁殖するので、これらを取り除かないと成長が悪かったり、死亡するため、貝掃除が行われる。付着生物は海藻、フジツボ類、石灰質の管にすむ多毛類、コケムシ、ホヤ、カイメンなどがおもなものである。この作業は夏季を中心として行われるが、最近では機械化されている。また貝殻に穿孔(せんこう)する多毛類や付着生物を除去するために、貝を短時間、淡水や濃塩水に浸漬(しんし)する処理が行われている。冬季、水温8~10℃以下になるような海域では、死亡する貝があるので、水温の高い養殖場に避寒が行われる。また、よりよい養殖場を求めて真珠の収穫まで貝を移動する場合もある。
 真珠の収穫は「浜揚げ」とよばれ、だいたい11月から翌年2月ごろまでの冬季に行われる。この時期には真珠の表面構造の光沢がもっともよい。貝殻から外した貝柱以外の肉を機械により液状に粉砕し、真珠を底に沈下させる方法で採取する。一般に全採取量の約80%が商品価値をもつ珠である。[和田克彦]
その他の貝による養殖
アコヤガイ以外の貝で遊離真珠が生産されているのは、シロチョウガイ、クロチョウガイ、イケチョウガイである。マベガイやアワビなどでは貝付真珠が生産されている。シロチョウガイ、クロチョウガイでも貝付真珠が生産されている。
 これらの種のうち、クロチョウガイ、マベガイ、イケチョウガイなどは、天然の母貝資源が少なくなったため、人工採苗により生産した種苗が多く使われている。シロチョウガイは天然・人工とも採苗技術が未発達のため、海底に生息する貝をダイバーが採取したものが用いられていたが、資源の枯渇を防ぎ、能率的生産のために、アコヤガイで行われているような人工採苗技術が普及しつつある。遊離真珠の養殖方法は原理的にはアコヤガイの場合と同じであるが、イケチョウガイの場合は、多くの場合、核を用いないで、外套膜片を別の外套膜に挿入する方法がとられている。このほか、各種類の貝の生息場所や生態および形態に応じて、それぞれくふう、改良がなされている。
 貝付真珠は、貝殻と外套膜の間に半球の核を挿入することによって生産される。その核にはろう石が用いられたが、最近ではプラスチック核が多く用いられている。[和田克彦]

真珠の形成機構

真珠袋上皮細胞が真珠を、あるいは外套膜上皮細胞が貝殻をいかにして形成するかは、生物における石灰化組織の研究の問題である。真珠の場合は貝殻と異なり、体内の閉鎖された環境のなかで、真珠袋上皮細胞という1層の組織が、殻皮層、稜柱層、真珠層のような炭酸カルシウムを主成分にする鉱物質を分泌する。したがって、真珠形成機構の解明は、このような環境で炭酸カルシウムが結晶する条件や過程を知ることにある。
 移植された外套膜片は、核の有無に関係なく、真珠袋を形成する。有核の場合は、核の周りを取り囲むように、無核の場合は、外套膜片自身がつくる袋状の腔(くう)所に鉱物質を沈着する。袋の上皮細胞の形態は、そこに分泌されている物質、すなわち真珠層、稜柱層、あるいは有機質によって異なる。一方、これらが1個の真珠に含まれる複合真珠が存在することから、この上皮細胞はその形態(分泌機能)を変えると考えられている。
 真珠を構成する主成分のカルシウムは粘液物質と結合して行動しており、一方、真珠袋上皮細胞の外側にある結合組織中に粘液腺細胞があり、それらが重要な働きをしていると推論されている。
 炭酸カルシウムがアラゴナイトとして沈着して真珠層をつくり、カルサイトとして晶出して稜柱層を形成する。これらの晶出機構には、貝類を含め種々の生物でさまざまな説が唱えられている。
 真珠層はアラゴナイトの結晶とコンキオリンからなるが、その結晶成長の際には、まずコンキオリンの膜(シート)が現れ、規則的な結晶がつくられるという。[和田克彦]

真珠の生産

アコヤガイ真珠は、海に面した西南日本のほとんどの県で生産されたことがあるが、現在では主生産県は三重、愛媛、長崎、大分、熊本の各県である。生産高は第二次世界大戦後急速に増加し、1966年(昭和41)をピークに減少に転じ、84年ごろから1.5~1.9万貫(56~73トン)の平衡状態が続いていたが、98年(平成10)以降は病害のため1万貫を割っている。なお、養殖真珠の重量は匁(もんめ)や貫が特例として使用され、貿易関係でもこれが通用している。イケチョウガイ真珠は滋賀、茨城、岐阜などの各県で生産されている。マベガイを母貝とするマベ真珠は鹿児島県奄美(あまみ)大島で生産されており、クロチョウガイ真珠は鹿児島(貝付真珠)、沖縄(真円真珠)の両県やタヒチ島(フランス領ポリネシア)で行われている。シロチョウガイ真珠は、東南アジアからオーストラリアなどで行われている。[和田克彦]

真珠の加工

真珠はダイヤモンドなどほかの宝石と異なり、ほとんど貝がつくりだしたままの姿で人間の賞用に通用する。しかし、そのような真珠は浜揚げされた珠の10%以下で、残りのものは人工の手を加えないと商品としては通用しない。貝の異常分泌物としての真珠は、多くの場合不純物を含むので、それらを除いたりするなどの加工処理が必要になる。これには漂白と染色がある。
 漂白はおもに過酸化水素を用いて行われている。真珠を傷めずに、能率よく、きれいに漂白するためにさまざまの薬剤が用いられる。漂白された真珠は染色されることもあり、淡桃色など消費者の好みに応じた色に調色される。
 漂白、染色された真珠は、「連(れん)組み」のために、形態、大きさ、真珠層の厚さ(巻き)、光沢(照り)、色彩などによって分類される。連組みはネックレス(首飾り)をつくるための作業である。このほかに、真珠は指輪、ブローチ、ブレスレット、ペンダント、ネクタイピンなどの装身具、さらに美術工芸品などに用いられ、それぞれの用途に応じて加工される。また、貝付の半円真珠には裏張り加工が施される。[和田克彦]

真珠の輸出および検査

かつては養殖真珠の大半は輸出に向けられていたが、内需の増大に伴って、国内向けの比率が高くなっている。しかし、日本で生産される養殖真珠は、依然として輸出向けのほうが多い。輸出先はアメリカ、ドイツ、スイス、インド、香港(ホンコン)、スペイン、フランス、イタリア、イギリス、カナダなど、40か国以上。近年の真珠および真珠製品の輸出量は1990年(平成2)の3.4万貫(127トン)から漸減し、99年は1.7万貫(63トン)、金額で556億円であった。
 輸出用の真珠は、すべて法律によって国の真珠検査所の検査を受けるよう定められていた。検査は、通常、連およびばら珠についてのみ行われ、天然・養殖を問わず、真珠の商品形態別に貝の種類、形状、色、光沢、真珠質の良否などを判別し、上級または下級の等級の格づけが行われた。この制度は1999年に廃止され、その後は民間による検定制度が行われている。[和田克彦]

真珠の品質

商品としての真珠は、形、色、光沢、真珠層の厚さ(巻き)、しみ、きずの有無、大きさなどでその品質が決まる。形は真球のものがもっともよいが、バロックとよばれる不整形のものも多い。それらはそれぞれの形に応じて呼称が与えられており、ドロップ(滴形)、ペアー(ナシ形)などがある。
 色は、色素に起因するものと、結晶構造と関連して光学的な屈折、反射、分光、干渉などの作用によるものとがある。色の種類としてはホワイト系、ピンク系、クリーム系、ゴールド系、グリーン系、ブルー系、ブラック系の7種類に大別される。特殊な好みは別として、一般に市場評価はピンク系が最高で、次がホワイト系となっている。
 光沢は「照り」や「つや」ともいわれ、色、巻きとともに真珠の品質を決める重要な要素である。真珠の光沢感は、表面の反射光のほかに、核面の反射光および真珠層内の拡散光など、結晶構造などによる光学的特性によるものである。したがって、真珠層の結晶構造の集合状態やその形状によって決まる。
 巻きは、核の外側に分泌された真珠層などによる被層の状況を意味しており、真珠の色、光沢と密接に関係する。真珠独特の美観と耐久性はこの被層状況によって決まる。真珠層が均等に巻き、その厚さが大きく、結晶構造が規則正しく並んでいるのが良品ということになる。真珠層の間に稜柱層や殻皮層を含んでいる場合もあり、それぞれに特有の色彩を呈する。一般に「はなだま」とよばれる優良真珠には、真珠層中に稜柱層が介在する場合もある。
 しみは、稜柱層や殻皮層からなっている。しみ抜きによって加工処理の過程で除かれるが、抜けないものもある。きずには、天然きず、加工きずなどがあるが、品質のうえでも欠点となる。大きさは品質に直接関係はないが、価格決定にあたっては重要である。一般に価格はサイズが大きくなると高くなる。商取引上、3ミリメートル未満の細厘(さいりん)から9ミリメートル以上の特大珠までの間に厘珠(りんだま)、小珠、中珠、大珠の区別がある。微小形のものはケシ珠とよばれることがある。
 このほか、商品としての真珠を決める要素に加工度がある。脱色、染色などの加工の巧拙が、耐久性や真珠本来の特性に微妙に影響する。[和田克彦]

真珠の文化史


古代
いままでに発見された最古の真珠は、紀元前4500年ごろのバビロンのビスマヤ遺跡で発掘されたものである。これは前2540年のエジプト第6王朝の真珠とともに、装飾品であったと考えられる。このほか、ペルシアの前2000年ごろの彫刻に真珠の首飾りがみられるし、前400年ごろのペルシア王の冬の離宮跡からも首飾りが出土している。また、クレオパトラがアントニウスの目前で、ぶどう酒(一説には酢)を満たした杯に真珠を投げ込んで驚かせたという逸話も有名である。アメリカ大陸ではメキシコのモンテ・アルバン遺跡から首飾りが発見されている。中国でも前漢の景帝の時代に諸国より献上させた記録があり、唐代では、貿易用の真珠を扱う官吏が任命されていた。その後、宮廷の調度品としての価値を高めていくのは、他の地域と同じである。しかし、真珠が人々の心を虜(とりこ)にしたのは、それがもつ宗教的、神秘的な面をも考慮すべきであろう。ローマ時代、プリニウスはその著『博物誌』のなかで、海底の貝が海面に浮かび上がり、天から降る霧を吸い込み、その露を育てたものが真珠で、曇った日は真珠の色を悪くし、雷光はその成長を止め、雷鳴はそれを破壊してしまうと紹介し、真珠を至上の財貨として位置づけている。こうした天界と真珠の結び付きは古代インド神話でも語られている。そこでは、真珠は満月の夜に天から落ちる露が目に入って珠(たま)になったものとされたり、ゾウ、イノシシ、カエル、ホラガイ、カキ、魚、竹などから生まれたと語られている。その中でもカキから出てくる真珠がもっとも多く、貝殻を開いているとき、その中に落ちた雨滴であると説かれたりしている。また、インドでは古くから、真珠を生命、栄光、力、長寿、理知、幸運のシンボルとして尊んだ。一方、婚礼の装飾具としても用いられ、クリシュナ神が結婚の贈り物とするため、自ら海に潜って真珠を採取したという伝承も残っている。さらに護符としての役目をもつことは、後述のヨーロッパや日本の様相と似ている。[関 雄二]
中世ヨーロッパ
中世ヨーロッパでは、装飾品としてよりもむしろ魔除(まよ)けとしての意味が大きく、また医薬としても用いられた。薬にする場合、小粒の真珠が好まれたという。その後、16世紀に入ると、この時代を別名パール・エージとよぶように、ふたたび王侯貴族の装身具としての役割が高まり、新たに天使、水のニンフ、愛する人の涙の結晶というような意味づけが与えられた。その後、ダイヤモンドの加工法が研究され真珠の人気を奪ったが、18世紀になり、真珠の産出量が減ると、ふたたびダイヤモンドと並んで宝飾品の王座を競いあうようになった。なお、ギリシア語では真珠はマルガリトスmargaritesといい、マーガレット(イギリス)、マルグリット(フランス)、マルガリータ(スペイン)などの女性の名や花の名前、発明当時色が似ていることから命名されたマーガリンなどにその名が残っている。ラテン語ではペルラperlaといい、英語のパールpearlの語源となっている。[関 雄二]
その他の伝承
中国の伝承に現れる真珠は、人魚の涙として語られているものが多く、なかには竜が空で戦っている間、口からこぼれたもので、雨をよぶと語られたり、そこから派生して火除けに役だつと信じられもしてきた。別の伝承では、洞庭湖(どうていこ/トンティンフー)の支流に両眼と6本の足をもつ魚が真珠をもっているとされている。
 北米北西海岸の先住民ヘイルックの伝承にも真珠は登場している。それによると、クマの排泄(はいせつ)物の中を歩いてしまい、怒って罵倒(ばとう)のことばを吐いた若い女性が、クマに、彼女自身の排泄物はどんなものであるかを尋ねられ、真珠と銅と答えている。この場合、美しいものという位置づけのうえに、富との結び付きが想定されるのは、神話全体を覆うこの女性と銅の象徴的意味からである。[関 雄二]
日本
238年に倭(わ)の女王卑弥呼(ひみこ)は魏(ぎ)王から真珠50斤を贈られている。さらに『万葉集』の巻7の歌のなかに、伊勢(いせ)志摩のあこや珠を詠んだものがあったり、『延喜式(えんぎしき)』に神社への奉納品として扱われたりしており、やはり古くから貴重なものであったことが容易に想像される。また、伊勢神宮の遷宮に際し、太神宮装束に埋め込まれることも知られている。仏教では、七宝の一つとして、大伽藍(がらん)や塔の建築に際し、その基礎に納められた。現存で最古のものは、東大寺三月堂の不空羂索観音(ふくうけんじゃくかんのん)の白毫(びゃくごう)と宝冠にある真珠とされている。日本でも13世紀から17世紀にかけては、心臓病などの薬とされ、また防毒剤や化粧品としても利用された。また平安時代には、戦(いくさ)に際して真珠を右腕につけて護符としたのは、その神秘的な力に頼る気持ちからであろう。現代の俗信でも、高知県幡多(はた)郡に、目にほこりが入ったときは、真珠を入れるととれるというのがあり、類似の話は沖縄の八重山(やえやま)でも採録されている。長崎県西彼杵(にしそのぎ)半島域では、真珠貝殻は熱さましになると伝えられている。[関 雄二]

真珠と装い

真珠は宝石の女王といわれ、有機質のデリケートな粒はしっとりとした情感をたたえ、優雅で女性的な味わいがある。装身具やトリミングとしてかなり古くから用いられてきたが、今日ではいかなるTPOにも通用するオールマイティの宝石とされている。養殖真珠が生まれる前は、ペルシア湾や紅海でとれた天然真珠がほとんどで、変形や小粒のものが多かった。ルネサンス期にはこの変形を利用して、エナメルや金、貴石などで装飾した、いわゆるバロック・ペンダントがつくられた。また真珠の長いネックレスとブローチやイヤリングの先で揺れ動くドロップパールが、アール・ヌーボーのころに大流行をみた。真珠が希少の時代の装身具は繊細で凝ったデザインの装飾が多い。
 真珠の色味は多彩であるが、もっとも一般的なのはピンクで、フランスではピンクとクリームの混じった色の真珠をロゼーとよんで珍重している。日本で人気があるのはピンク、ブルー・ホワイト、シルバー、イエローなどであるが、欧米ではブラック。最近は調色加工されることもある。黄色系は割安である。
 なお、真珠は6月の誕生石とされている。
(1)真円真珠 正円に近いものが上等とされ、8ミリメートル以上の大珠は非常に高価である。真円の養殖真珠はほとんどがアコヤガイを母貝とするアコヤ真珠である。
(2)マベ真珠 半円真珠のほとんどはマベガイを母貝とする。指輪、ピン、ブローチなどにする。
(3)変形真珠 バロックとよばれる不定形のもので、卵形、洋(よう)ナシ形、ドロップ形、ボタン形などがある。ルネサンス期に大流行をみた。一風変わった趣(おもむき)があり、愛好者は少なくない。
(4)南洋真珠 厳密にはシロチョウガイを母貝とする白蝶(しろちょう)真珠だけをいう。ミャンマー(ビルマ)、フィリピン、ボルネオ近海でとれ、粒が大きく真円で10ミリメートルから15ミリメートルくらいまで、変形もある。最近は日本でも国産品をしのぐ需要がある。
(5)黒蝶真珠 黒真珠(ブラック・パール)ともいう。クロチョウガイからとれる灰色から漆黒までの真珠。このうち欧米では、とくにブルー系とシルバー系が好まれる。アコヤ真珠を黒く染色した偽物も出回っている。
(6)淡水真珠 フラットな米粒状、棒状、クロス、ドラゴンなどさまざまな形があり、変わった色味に、オレンジの濃淡やライラック系、ワイン系がある。幾重にも連ねてブレスレットやネックレスにする。
(7)模造真珠 通称貝パールとよばれる。ベル・エポックの真珠の大流行期に普及し、アール・ヌーボー様式の装身具にふんだんに使われた。光沢は劣るが、安価なことと扱いの楽なことから気軽に用いられる。[平野裕子]
『小林新二郎・結城了伍著『真珠の研究』(1959・技報堂) ▽真珠養殖全書編集委員会編『真珠養殖全書』(1965・全国真珠養殖漁業協同組合連合会) ▽松井佳一著『真珠の事典』(1965・北隆館) ▽町井昭著『真珠物語』(1995・裳華房) ▽松月清郎著『真珠の博物誌』(2002・研成社)』

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世界大百科事典内の真珠の言及

【貝】より

…また美しい貝殻を集めて楽しむことも盛んになった。一方,貝を養殖して食用としたり,真珠をとる技術も進歩した。
[貝塚]
 昔の人が海や川,湖沼から貝を採取し,食べたあとの貝殻を捨てた場所が貝塚である。…

【対馬】より

…かつてはイカ漁業が対馬漁業の代名詞のようにまでいわれていたが,島の西側漁場が日韓漁業協定による共同規制水域の設定で出漁隻数に制限をうけ,漁獲高は年々減少している。またタイ,ハマチ,真珠の養殖が行われている。とくに浅茅湾を中心とする真珠養殖は,大正期に島外業者によって導入されたもので,第2次大戦後急速に伸びて地元民による養殖も行われており,養殖真珠の日本三大産県の一つである長崎県の総収獲量の約4割を占めている。…

【涙】より

…愛する息子メムノンを失って以来,曙の女神エオスの流す涙は朝露となって地上のすべてをぬらしている。悲しみの妖精の涙は真珠になって虹の7色に光る(アンデルセン《最後の真珠》)。涙が真珠に変わる話は他にもあって,喪服に身を包むときには結婚指輪以外の装身具は本来不可とされていたのに,近年は商業主義によって涙の宝石である真珠,とくに黒真珠は身につけてもよいとされてしまった。…

【ペルシア湾】より

…有史以前においては,南イラク全域が海の下に水没していたともいわれている。 ペルシア湾の沿岸地域は,古来みるべき産業がなく,例外は前2000年ころのアッシリア時代にすでに知られていた天然真珠の採取で,これは現在でもバーレーンを中心に行われている。商業,貿易は未発達な産業を補うものとして湾岸地域の経済を支えてきた。…

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