カシーダ(英語表記)qaṣīda

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カシーダ」の意味・わかりやすい解説

カシーダ
qaṣīda

アラビアで始った詩形。英語のオード ode (頌詩,賦) などを訳語にあてるが,便宜的のもので,アラビア語詩独特の特色と構成とをもつ。のちにペルシア語やトルコ語の詩にも取入れられ,それぞれ若干の変化を生じた。もともとはアラビア語のカサダ qaṣada (求める,追求するなどの意) という言葉から起り,欠点のない完璧な詩というような意味になった。6世紀頃にアラビアで起り,特に遊牧部族の詩人たちの作にすぐれたものが多かった。韻律 (メーター) も尾韻 (ライム) も1つのカシーダ内ではただ1種で通し,7バイト (前後2句をもって1バイトとする) からせいぜい 100バイトくらいの長さまでで,それ以上の長詩は後世にならないと現れない。イスラム時代以前から諸種の詩形のうち最も完成されたものとして競いつくられ,イスラム時代になっても,アラビア語の詩ではこの形が典型的なものとなり,最近にまで及んだ。もともとは各詩人がその部族の人々の優秀さを誇ったり,保護者を称賛したりするためにつくったのだが,いきなり本題に入らず,その前置きとして,まず,詩人たちが昔,愛人と楽しく住んだ野営地の荒廃の跡を訪れ,過ぎし日々を哀傷する詩から始る。次にラクダや馬の長所をうたったり,砂漠を越えてもとの部族や自分を保護してくれる人物のもとに旅していくところをうたう。こうして相手の心をその詩のなかに引入れてから最後に本題の頌詩に入るのである。これが本来のカシーダの形式だが,後世になるといろいろの変化を生じた。

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