メソメリズム(読み)めそめりずむ(その他表記)mesomerism

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メソメリズム」の意味・わかりやすい解説

メソメリズム
めそめりずむ
mesomerism

共役系の電子分布や性質は、ただ一つの化学構造式では十分に表すことができず、二つ以上の構造式の中間状態としてもっともよく表されるという考え方である。メソメリー、またはメゾメリーMesomerie(ドイツ語)ともいう。たとえば、アミド類の構造は通常は以下の(1)の構造式で示されるが、実際には分子は平面構造をとっていてC-N結合の周りでの回転がおこりにくくなっているなど、C-N結合が二重結合に近い性質をもっていて、(1)の構造と(2)の構造の中間の状態と考えられる。


 メソメリーの概念は最初イギリスのインゴルドにより提唱されたが、のちにアメリカのポーリング量子力学的な共鳴と関係づけたので、現在では共鳴とほぼ同じ意味で用いられている。メソメリーにより生ずる電子分布および反応性への効果を、有機電子論ではメソメリー効果またはM効果とよぶ。

[廣田 穰]

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化学辞典 第2版 「メソメリズム」の解説

メソメリズム
メソメリズム
mesomerism

共役系を有する化合物の電子分布は単一の構造式では表現できず,二つ以上の構造の重ね合わせによって表現できるという理論.たとえば,下記の化合物の電子状態は,分極していない構造(a)と分極した構造(b)との中間にあると考える.これをメソメリー効果あるいはM効果という.これは,C.K. Ingold(インゴルド)によって提出されたが,のちにL.C. Pauling(ポーリング)により量子化学的な共鳴理論と結びつけられ,今日では,メソメリズムと共鳴とは同じ意味に用いられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「メソメリズム」の意味・わかりやすい解説

メソメリズム
mesomerism

ある化合物の実際の状態は,一つの化学構造式で表すことができず,いくつかの化学構造式に相当する状態の重ね合せによって表されるという考え方で,現在では量子化学的共鳴現象と同義に用いられている。
共鳴
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