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量子化学 りょうしかがくquantum chemistry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

量子化学
りょうしかがく
quantum chemistry

量子力学によって化学の諸問題を論じる理論化学の一分野。 1923年,L.V.ド・ブロイが電子のような微粒子には粒子性と同時に波動性のあること (二元性) を提起し,続いて 26年,E.シュレーディンガーが微粒子の運動状態を表わす方程式として電磁波方程式と類似の波動方程式を提起した。ここに波動力学,のちの量子力学が誕生した。量子力学の特色は,物質の状態をある一定条件下で測定しても,常に一定の測定値を得るとはかぎらないという点にある。すなわち確率的,統計的な取扱いをすることが必要となる。たとえば電子の存在する位置,エネルギーなども常にこのように統計的な取扱いが必要となる。物質の構成単位である電子がこのような挙動をとる以上,物質を対象としてそれらの物性,構造,反応を論じる化学の分野では量子力学が重要な基礎理論の1つとなることは当然である。たとえば化学結合論 (主として共有結合についての) ,分子間力,反応速度論 (主として絶対反応度論についての) ,固体物性 (光,電磁気,比熱などの物性) ,赤外吸収スペクトル,電子帯スペクトル解析のための基礎理論など,その応用範囲はきわめて広い。

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デジタル大辞泉の解説

りょうし‐かがく〔リヤウシクワガク〕【量子化学】

量子力学の理論を用いて化学現象を解明しようとする理論化学の一分野。化学結合分子構造・化学反応などの理論が解明されている。

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百科事典マイペディアの解説

量子化学【りょうしかがく】

量子力学に基づいて化学の諸現象を研究する物理化学の一部門。原子価の量子理論,分子構造,分子間力,化学反応の起きる部位や反応経路,反応速度などの諸問題のほかに最近では生物化学的な問題も扱う。

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世界大百科事典 第2版の解説

りょうしかがく【量子化学 quantum chemistry】

理論化学の一つで,量子力学を化学の諸問題に応用する学問分野。W.ハイトラーとF.ロンドンが1927年に,前年創始されたばかりの量子力学を用いて水素分子の共有結合を説明したのに始まり,化学結合の諸概念や化学反応性の理論などが発達した。70年代からは,コンピューターの高速化に伴って複雑な分子に対する大規模計算が盛んになり,分子の構造や反応について定量的な知見が得られるようになった。
[化学結合論]
 化学において最も重要な化学結合は共有結合である。

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大辞林 第三版の解説

りょうしかがく【量子化学】

量子力学の原理・手法に基づいて、物質の構造、化学的性質、反応機構などを研究する物理化学の一分野。1920年代末以来発展し、化学結合の理論、分子構造の解明、物質の分光学的性質の解釈、化学反応の理論などに成果を挙げている。フロンティア電子理論はその例。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

量子化学
りょうしかがく
quantum chemistry

化学の諸現象を量子力学の立場で理解する化学の一分野。化学は物質の構成、その変化を追究する学問であるが、すべての物質は究極的には原子・分子のレベルで考察することができる。原子・分子や素粒子などは量子力学によって体系化されている。この力学体系は古典力学とは異なり、視覚化すれば間違ったモデルとなってしまう。物質の本質を見極めるために、化学では原子・分子を気軽にモデル化するが、本来モデル化できない量子力学体系を化学のモデルとして活用する学問が量子化学である。
 量子力学の基本はシュレーディンガーの波動方程式である。この式は、取り扱う系の質量mと位置のエネルギーUとが決まれば、その系のエネルギー値Eが求められる。このEは、量子力学が与えるその系の固有値で、物質と外部からの電磁波との相互作用(光の吸収、発光など)は異なる二つのエネルギー固有値の差ΔE=hνによって観測される。ここで、hはプランク定数で、νは電磁波の振動数である。
 量子化学の発祥は水素の原子スペクトルの解釈である。デンマークのN・ボーアは、原子核の周りには電子の動く軌道があって、それらの軌道は不連続な固有のエネルギー値をもっていると仮定した。この仮定によって、今日の原子構造の基礎ができあがった。
 イギリスのハイトラーとロンドンは、水素分子の結合状態を量子力学を用いて解明した。彼らは、水素原子のもつ原子核と電子の間に働くクーロン力をUにとった。今日この方法は原子価結合法(VB法)とよばれている。これとは別に、原子の波動関数の一次結合を分子の波動関数にとり、水素分子に対するエネルギー値を求める方法がある。これは分子軌道法(MO法)とよばれる。
 今日では、複雑な分子に対してはMO法が広く用いられている。ここで、電子どうしの相互作用が問題となるが、今日では交換積分や重なり積分の値を半経験的または非経験的な値にとって、コンピュータでエネルギー値を求める方法が確立しつつあり、精度のよい理論値が得られるようになっている。
 この方法は、分子の励起状態の構造を推定することにも用いられる。これらの構造は反応中間体のモデルに使われるので、量子化学は構造や物性のみならず、反応論にも活用できる時代となってきた。[下沢 隆]
『福井謙一著『近代工学化学2 量子化学』(1968・朝倉書店) ▽原田義也著『基礎化学選書12 量子化学』(1978・裳華房)』

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