日本大百科全書(ニッポニカ) 「メルクール」の意味・わかりやすい解説
メルクール
めるくーる
Merkur
ドイツの文化・文芸・政治・思想の月刊批評誌。1947年ヨアヒム・モラスJoachim Moras(1902―61)とハンス・ペシュケHans Paeschke(1911―91)の共同編集で、シュトゥットガルトのドイツ出版社協会より創刊。副題は「ヨーロッパ思想のためのドイツの雑誌」Deutsche Zeitschrift für europǎisches Denkenである。広い見地にたって政治と文化を考察するのが、この雑誌の特色といえよう。61年モラスの死去によりペシュケが単独編集。その後発行所もかわり、68年以降クレット・コッタ社Verlag Klett-Cotta発行、販売部数は約5000。編集部は98年にベルリンに移り、現在の2名の編集者はドイツ文学を専攻。誌名のメルクールは、神々の使者であるマーキュリー神に由来する。おもな読者は、文学、文化、政治、社会問題に批判的関心をもつ知識人層。雑誌の特徴としては時流に迎合しない批判性、反ユートピア的思考、党派性にとらわれないリベラリズムがあげられる。文化的関心と政治的関心の両面に配慮した編集方針をとっている。おもに大学教員が執筆する文芸時評、哲学批評、社会批評を中心記事とし、文化・文芸・社会批評総合誌という性格をもっている。
[松本道介]