ゲレス(読み)げれす(英語表記)Joseph Görres

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲレス」の意味・わかりやすい解説

ゲレス
Görres, (Johann) Joseph von

[生]1776.1.25. コブレンツ
[没]1848.1.29. ミュンヘン
ドイツの学者,思想家。 19世紀前半のドイツ・カトリックの精神的指導者。 1806年からハイデルベルク大学に移り,アルニム,ブレンターノらのロマン派作家とともに『隠遁者のための新聞』 Einsiedlerzeitungを刊行し,中世詩の研究『ドイツ通俗本』 Die teutschen Volksbücherを著わした。 08年には生地コブレンツに帰りペルシア語を研究して,10年『アジア世界の神話史』 Mythengeschichte der asiatischen Welt (2巻) を著わした。 13年ナポレオンの衰退とともに高まったドイツ民族主義風潮の先頭に立ち,14年2月には『ライニッシャー・メルクール』 Rheinischer Merkurを発刊,その革新的精神はプロシア政府による発行禁止を招き,19年『ドイツと革命』 Teutschland und die Revolutionにより逮捕状を発せられて,ストラスブール,次いでスイスに亡命した。その後,政治的幻滅を感じ,カトリックに帰依ウルトラモンタニスムス神秘主義を唱え,27年バイエルン王ルートウィヒ1世に招かれてミュンヘン大学教授となった。晩年著作に『アタナシウス』『キリスト教神秘主義』 Die christliche Mystik (4巻) がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲレス」の意味・わかりやすい解説

ゲレス
げれす
Joseph Görres
(1776―1848)

ドイツの政論家、歴史家。学生時代フランス革命に心酔するが、やがて祖国再興に献身。1806年ハイデルベルク大学講師となり、『ドイツ民衆本』(1807)により古来の国民文化を擁護する一方、C・ブレンターノ、L・A・アルニムらとハイデルベルク・ロマン派の機関誌『隠者新聞』(1808)を創刊解放戦争のとき『ライニッシェル・メルクール』紙を主宰しナポレオン排撃の筆をとり、「第五強国」と恐れられる。戦後はプロシアの絶対主義を批判し弾圧を受ける。後年カトリック神学の研究に従事、1827年以降ミュンヘン大学で歴史学を講ずるかたわら、『キリスト教的神秘思想』4巻(1836~1842)を著す。

[富田武正 2017年11月17日]

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