日本大百科全書(ニッポニカ) 「ものづくり補助金」の意味・わかりやすい解説
ものづくり補助金
ものづくりほじょきん
国際競争力向上や新産業創出を促すため、中小企業の革新的な製品・サービス開発や、省力化など生産プロセスの改善を行うための設備投資、システム構築を支援する補助金。正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)などに基づき、経済産業省と中小企業庁がリーマン・ショック後の2009年度(平成21)に創出した。新製品・サービスの開発(申請枠:製品・サービス高付加価値化枠)、生産プロセスなどの改善(同:省力化〈オーダーメイド〉枠)、海外需要の開拓(同:グローバル枠)などを行う中小企業を対象に、かかった原材料費、機械装置・システム構築費、専門家経費、海外旅費などの経費の3分の2から2分の1を補助する。補助上限(2024年1~3月公募分)は高付加価値化枠が2500万円、省力化枠は8000万円、グローバル枠は3000万円。ただし大幅賃上げに対しては上限額の引上げ特例がある。ものづくり補助金は設備投資を促す効果が大きく、景気対策の一環として原則、補正予算編成時に予算規模や補助内容が決められる。このためデジタル化、カーボン・ニュートラル化、賃上げ促進など時々の重点政策に沿って根拠法、正式名称、対象業種などが変わるほか、補助上限・補助率を上下させたり、小規模・再生事業者向けに優遇措置を設けたり、複数企業による新ビジネス構築を支援したりしている。採択企業は2009年度から2023年度(令和5)公募分までで延べ4万社を超え、政府の中小企業向け補助の代表的制度である。一方で、行政改革推進本部や財務省など政府内から、採択手法が甘く、政策効果に疑問があるとの批判が出ている。
ものづくり補助金は通常、補正予算成立後の2、3月から秋口にかけて、複数回、申請を受け付ける。希望する企業は、金融機関、商工会、商工会議所などの公的支援機関、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士などの国が認定する助言機関(認定支援機関)と相談(任意)し、付加価値額や給与支給総額の目標値などを盛り込んだ事業計画を策定して申請する。申請内容の革新性などを、専門家でつくる評価委員会が査定し、補助対象として採択する。毎年度の予算額を消化した段階で、採択は打ち切られる。
[矢野 武 2024年9月17日]