公認会計士(読み)コウニンカイケイシ(その他表記)certified public accountant

デジタル大辞泉 「公認会計士」の意味・読み・例文・類語

こうにん‐かいけいし〔‐クワイケイシ〕【公認会計士】

昭和23年(1948)の公認会計士法に基づき、貸借対照表損益計算書その他の財務に関する書類の監査または証明を業とする者。
[類語]計理士税理士

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精選版 日本国語大辞典 「公認会計士」の意味・読み・例文・類語

こうにん‐かいけいし‥クヮイケイシ【公認会計士】

  1. 〘 名詞 〙 昭和二三年(一九四八)制定の公認会計士法に基づき、貸借対照表、損益計算書など、会社の計算書類の監査または証明を職業として行なう者。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公認会計士」の意味・わかりやすい解説

公認会計士
こうにんかいけいし
certified public accountant

監査業務、会計業務、税務業務および経営コンサルティング業務などに従事する職業専門家。19世紀のイギリスは産業の著しい発展をみたが、これに伴う株式会社制度の発展、監査役監査の実施などを背景に職業会計専門家が要請されるようになった。そこで1845年にビクトリア女王の勅許状を得てエジンバラ勅許会計士協会が設立され、この協会に属する会計専門家が勅許会計士Chartered Accountant(CA)と名のったことに端を発する。イギリスおよびイギリス連邦の国々では、今日でも職業会計人を勅許会計士とよぶ。アメリカでは、1896年にニューヨーク州で公認会計士法が成立し、その後全州で成立した。これにより公認会計士Certified Public Accountant(CPA)が法律上職業会計人として認められた。

 日本では、1948年(昭和23)に、計理士にかわる職業専門家として公認会計士法(昭和23年法律第103号)により認められた。証券取引法(昭和23年法律第25号、現在の金融商品取引法)に基づく監査の実施にあたり、高度の専門的知識を有する会計専門家が要請されたが、当時の計理士は、その資格取得が比較的簡単であり、かつ登録しても実際に専業とする者も少なかった。また一般に知識・技能水準も高いものといえず、先の要請を満たしえなかったためである。

 公認会計士法の試験規定により、翌1949年5月に第1回の特別試験(計理士で一定の条件を満たす者に受験資格が与えられた)が実施された。そのときの受験者は2160名に達したが、合格者は60名であり、合格率は2.8%の厳しさであった。同年末までに公認会計士として大蔵省(当時)に登録した者は57名で、ここに日本で初めての公認会計士が登場することになった。翌1950年には261名、1951年には448名と着実に増加した。公認会計士法が成立してから10年後の1958年10月、制度制定10周年記念式典が中央大学(講演会)と椿山荘(ちんざんそう)(祝賀会)で執り行われた。このとき、日本の公認会計士の数は1514名に達し、会計士補は1414名であった。式典において、当時大蔵大臣であった三木武夫(たけお)は祝辞として、「公認会計士は単に不適正な会計処理を指摘するだけではなく、それを未然に防止しさらに進んで企業の会計処理を指導改善するという重大な使命をもっているものであります。したがって、(略)単に監査業務だけに専念するだけではなく進んで企業経理の指導改善にあたられることがぜひとも必要であると考えます。」と述べた。

 従来、公認会計士となる資格要件は厳しく、3次にわたる国家試験が課せられた。一次試験は一般的学力を問い(ただし、大学などの一般教養科目の修習者は免除)、二次試験は専門的学識を問うもので、二次試験合格者は登録により会計士補となる。その後、3年間の業務補助等により応用的専門能力を問う三次試験の受験資格を得、それに合格し登録して公認会計士となるというものであった。

 しかし、欧米に比べ日本の公認会計士は少なく、また会計監査の重要性の高まりや、経済社会からの公認会計士に対する要請の増大にかんがみ、多様な、また多くの人々が挑戦できるような新しい試験制度が、2006年(平成18)から実施されている。この公認会計士試験は、必要な学識およびその応用能力等を有するかどうかを判定することを目的として、一般的学力を問う一次試験は廃止し、短答式(マークシート方式)および論文式による筆記の方法で行うことになり、三次試験も廃止された。短答式試験は、財務会計論、管理会計論、監査論および企業法について行い、論文式試験は、短答式試験に合格した者について、会計学、監査論、企業法、租税法および選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうち受験者があらかじめ選択する1科目)について行う。公認会計士になるには、この試験に合格した後、業務補助または実務従事の期間を2年以上経て、実務補習を修了することが必要である。

 公認会計士の業務は、(1)財務書類の監査または証明をなすこと、(2)財務書類の調製をし財務に関する相談に応ずること(公認会計士法2条)のほかに、税理士として登録することにより税理士業務も行うことができる。法定監査は公認会計士および監査法人にのみ認められた独占業務であるから、公認会計士業務の中心は監査業務となる。2022年(令和4)9月末時点では、3万4166名の公認会計士と278の監査法人が登録されている。公認会計士の名称を使うものは全員強制加入による特別民間法人日本公認会計士協会」が組織されている(同法43条・46条の2)。

[長谷川哲嘉・中村義人 2022年11月17日]

『新井益太郎著『会計士監査制度史序説』(1999・中央経済社)』『百合野正博著『日本の会計士監査』(1999・森山書店)』『池田唯一・三井秀範監修、大来志郎・野崎彰・町田行人著『新しい公認会計士・監査法人監査制度――公正な金融・資本市場の確保に向けて』(2009・第一法規)』『羽藤秀雄著『公認会計士法 日本の公認会計士監査制度』新版(2009・同文舘出版)』『白石伸一著『ドキュメント 会計監査12か月 PART1――山中氏のつぶやき』(2009・税務研究会)』『白石伸一著『ドキュメント 会計監査12か月 PART2――山中氏の思い』(2010・税務研究会)』『友岡賛著『会計士の誕生――プロフェッションとは何か』(2010・税務経理協会)』『千代田邦夫著『闘う公認会計士――アメリカにおける150年の軌跡』(2014・中央経済社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「公認会計士」の意味・わかりやすい解説

公認会計士 (こうにんかいけいし)

企業の公表する財務諸表が社会的に信頼されるには,独立の第三者である職業的専門家の監査によってその適正性が立証される必要がある。この監査を,他人の求めに応じて報酬を得て主たる業務として行っている職業的専門家を公認会計士という。公認会計士の業務は,監査業務のほかに,会計業務,税務業務,経営助成業務と多岐にわたっている。監査業務には,商法による監査,証券取引法による監査,その他の法令による監査,法令によらないで受ける任意監査等がある。会計業務には,会計制度,帳簿組織,記帳方法,内部統制組織等の調査,立案,相談等がある。また公認会計士は,税務業務の専門家として税務申告書の作成や税務相談等を行っている。経営助成業務としては,経営者の意思決定に必要な情報と助言の提供を行っている。産業の発達に伴って,企業の会計制度も複雑かつ大規模化し,また信用経済の発展とともに企業をとりまく利害関係人も増え,その利害調整の必要性から生まれたのが,公認会計士制度である。

 この制度が最初に生まれ発展したのはイギリス,ついでアメリカで,会計士監査の理論と技術は企業の発展および変化に応じて発展してきた。これらの国では,信用目的,投資目的のため,会計士の業務が重視され,その社会的地位も高くなった。会計士accountantも,会計士協会を組織し,会員の資質の向上をはかった。イギリスでは1880年にイングランドおよびウェールズ勅許会計士協会(イギリス勅許会計士協会。略称ICA)が設立され,アメリカにおいては1916年(起源は1887年にさかのぼる)アメリカ会計士協会(AIA)が組織された(1957年,アメリカ公認会計士協会AICPAになる)。日本においても,職業会計人の必要性から,1927年に計理士法が立法化され,会計士制度の端緒となった。この計理士法のもとでは資格試験も実施されたが,他方,専門学校以上で会計学を修めれば試験なしで登録ができたため,計理士登録者も一時は全国で2354人に達した。第2次大戦後の48年に証券取引法が制定公布され,投資家保護の目的のために上場株式を発行している会社に対し,監査報告書を添付した有価証券報告書の提出義務を負わせた。この監査の担い手として従来の計理士が適切であるかどうかが問題とされ,同年,計理士法に代わって公認会計士法が制定公布され,公認会計士制度が発足することになった。この制度では,まず第1次,第2次の公認会計士試験(国家試験)に合格して会計士補資格を取得したのち,一定期間(最低3年)の業務補助ないし実務従事およ(いしきょうがい)び実務補習後,第3次試験に合格し,日本公認会計士協会に備える公認会計士名簿に登録したものを公認会計士という。第1回の公認会計士試験は翌49年実施された。74年には商法上も公認会計士監査が取り入れられ,公認会計士の仕事の範囲は拡大した。
会計監査 →会計監査人
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百科事典マイペディア 「公認会計士」の意味・わかりやすい解説

公認会計士【こうにんかいけいし】

財務書類の監査および証明を業とする者。公認会計士法(1948年)により従来の計理士に代わって設けられた。公認会計士試験に合格し,登録を受けなければならない。証券取引法は上場株式の発行会社の提出する財務諸表に公認会計士の監査証明を受けることを要求しており,また会社法上の大会社については会計監査人による監査を要求されている。近年,地方自治体の経理について公認会計士による外部監査を導入せよとの提案もある。[監査法人] 公認会計士の法人組織として1966年公認会計士法改正により導入。社員は公認会計士に限られ,5人以上の社員で構成し,その組織は合名会社に類似するが,設立には内閣総理大臣の認可が必要。虚偽の監査証明を防ぎ,公認会計士の独立性を強化するために新設。上場企業の監査は上位4法人(四大監査法人と通称)の寡占化が進んでいる。
→関連項目会計監査会計士監査基準行政書士計理士

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知恵蔵 「公認会計士」の解説

公認会計士

他人の求めに応じて、報酬を得つつ財務書類を監査・証明する職業。この業務を行うことができるのは、公認会計士法に従い第1次・第2次の筆記試験に合格、3年間の実務を経て第3次試験に合格し、公認会計士名簿に登録された者のみ。また税理士名簿に登録することにより、税理士の業務を行うこともできる。一方、第2次試験に合格して会計士補名簿に登録された者を会計士補といい、公認会計士の仕事を補佐できる。この仕事は多くの場合、個人としての公認会計士ではなく、監査法人と呼ばれる法人が企業から委託されて行う。2003年5月に公認会計士法が改正され、06年度からは、これまで3段階5回だった試験が1段階2回に簡略化される。金融庁は06年6月30日現在1万7224人の公認会計士を、18年頃には5万人に増やす方針。また、改正に伴う政令で、04年4月より公認会計士の独立性、監査証明の客観性確保のため7年での担当会計士の交代、その後2年のインターバルが義務付けられた。

(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公認会計士」の意味・わかりやすい解説

公認会計士
こうにんかいけいし
certified public accountant

財務書類の監査または証明をすることを業とする者。第2次世界大戦後アメリカ合衆国の制度にならい,従来の計理士に代わって設けられた制度で,公認会計士法に基づく国家試験に合格し,日本公認会計士協会に登録することを要する。その業は,財務書類の監査または証明のほか,財務書類の調製,財務に関する調査・立案や財務に関する相談に応じることである。会社法における会計監査人は,公認会計士または監査法人でなければならない(会社法337条1項)。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「公認会計士」の解説

公認会計士

証券取引法及び商法に基づく会計監査を行なえる国家資格保持者。企業の財務諸表や会計書類などを第三者の立場からチェックし、信頼性を担保するのが役目。国家試験は3次試験まであり、最終試験を受けるには会計士補として3年間の実務経験が必要。医師、弁護士と並んで「3大難関資格」と呼ばれている。国内には現在、約2万人の会計士がいると言われるが、金融庁は会計士を5万人に増やす計画を打ち出し、会計専門職大学院など教育機関の整備に取り組んでいる。

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株式公開用語辞典 「公認会計士」の解説

公認会計士

他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする者。 公認会計士試験に合格した者。公認会計士法 第1則第1条には、 「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」 と定められている。

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会計用語キーワード辞典 「公認会計士」の解説

公認会計士

起業の財務諸表の監査を行うことを業務とするのが公認会計士。公認会計士が5人以上集まると、監査法人を作ることができる。公認会計士の主な業務は証券取引法監査・商法監査・学校法人監査・労働組合監査・独立行政法人監査・政党助成金監査・信用金庫・労働金庫・信用組合監査がある。公認会計士は税理士登録さえすれば、税理士としても業務を行うことができる。

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世界大百科事典(旧版)内の公認会計士の言及

【会計監査人】より

…1974年の商法改正によって制度化された。それ以前にも,証券取引法の適用を受ける会社は,貸借対照表などの財務諸表について,公認会計士による監査を受けることが要求されていた。しかし,それは有価証券報告書など大蔵大臣に提出する書類に含まれる財務諸表についてであり,定時株主総会で承認した後のものを公認会計士が監査していた。…

※「公認会計士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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