財務省設置法によって設置された国の行政機関。2001年(平成13)1月の中央省庁再編に伴い、大蔵省から金融行政を除く行政事務と権限を引き継いだ。
財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の運営、国庫の管理、通貨に対する信頼の維持および外国為替(かわせ)の安定確保などを任務とする。その所掌事務には、国の予算、決算および会計に関する制度の企画・立案、国の予算および決算の作成、税制に関する企画・立案、国庫および通貨制度の企画・立案、財政投融資の企画・立案、国有財産等の監理、外国為替に関する制度の企画・立案、金融破綻(はたん)処理制度および金融危機管理に関する企画・立案などがある。財務省の組織については、その長は財務大臣であり、中央省庁再編に伴い、大臣のリーダーシップを補佐するものとして、財務副大臣、財務大臣政務官という特別の職が新たに設置された。内部部局として、大臣官房のほか、主計局、主税局、関税局、理財局、国際局が置かれている。施設等機関として、財務総合政策研究所、会計センターなどが置かれている。特別の機関として、造幣局、印刷局が置かれていたが、これらは2003年に独立行政法人となった。審議会等として、財政制度等審議会(旧財政制度審議会)などが、地方支分部局に、財務局、税関などがある。外局として国税庁が置かれている。
[山田健吾]
旧大蔵省との違いは、大蔵省が国の行政機関のなかで財政、金融を担当する省として大きな権限をもっていたのに比べ、財務省は金融を分離し財政を中心につかさどる省となったことである。金融行政については、政府の「金融と財政の分離」の方針の下、1998年(平成10)6月金融監督庁が新設され、2000年7月には金融庁となった(この時点で大蔵省の金融企画局は廃止)。金融庁は、金融監督庁の業務であった銀行検査や監督に関する業務(金融庁の検査局や銀行課、保険課、証券課が置かれている監督局が担当)と金融制度にかかわる企画・立案(大蔵省時代は同省の金融企画局の担当であった)を主要な任務としている。こうして大蔵省時代の金融行政事務は、財務省から分離され、内閣府の外局となった金融庁に移管されたのである。
もう一つ、大蔵省時代の主要な任務であった予算については、予算編成権が、内閣府の経済財政諮問会議などに移された。財務省主計局の事務は「国の予算、決算および会計に関する制度の企画・立案・作成等」であることから、依然として財務省は予算にかかわるが、予算の基本的な方針を決める「予算編成権」は内閣府にある、ということになる。
さらに、郵便貯金、簡易生命保険、厚生年金保険などの準備金、余裕金を資金運用部資金として大蔵省が運用してきたが、その大半を占める郵便貯金、簡易生命保険の運用については2001年1月からは総務省郵政事業庁が、2003年4月からは国営の日本郵政公社が引き継いだ(2007年10月1日の郵政民営化以降は独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が管理)。そのため、大蔵省を引き継いだ財務省の運用部資金(2001年4月より財政融資資金と改称)は大幅に減少した。以上みてきたように、金融を分離され、予算編成権は内閣府に移り、財政融資資金が大幅に減った。財務省の発足時に限ってみれば、大蔵省時代の権限は大幅に縮少され、名称どおり財務政策だけの財務省となった、といえよう。
[山田健吾]
『北俊夫著『図説・日本の政治と省庁のすがた 農林水産省・経済産業省・外務省・財務省・法務省』(2002・旺文社)』▽『執印隆一著『官庁完全情報ハンドブック(5) 財務省』(2002・インターメディア出版)』▽『川北隆雄著『「財務省」で何が変わるか』(講談社+α文庫)』▽『『財務省金融庁要覧』各年版(大蔵要覧出版)』▽『米盛康正著『財務省年鑑』各年版(時評社)』▽『『財務省の機構』各年版(大蔵財務協会)』
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