改訂新版 世界大百科事典 「モモスズメ」の意味・わかりやすい解説
モモスズメ (桃雀)
Marumba gaschkewitschii
鱗翅目スズメガ科の昆虫。翅の開張6~8cm。前翅の翅頂はとがり,外縁は鋸歯状。赤みをおびた褐色で,黒褐色線が多数あり,外縁部と翅底部は黒く,外縁に近い後縁部に丸い紋がある。後翅は紅色あるいは赤色,後角近くに黒紋がある。北海道から屋久島までの各地,朝鮮半島,台湾,中国からインドまで分布する。全国的にもっともふつうに見られるスズメガで,春から夏にかけて2回出現する。夜行性で,灯火によく飛来する。幼虫は多食性で,モモ,ウメ,サクラ,スモモ,アンズ,ナシ,リンゴ,ビワなどのバラ科のほか,ニシキギ,ツゲなど多くの植物の葉を食べる。老熟したものは体長7~8cm。全身に顆粒(かりゆう)を散布し,腹部には8条の斜線がある。尾角は長く直線的。体色には緑色型と黄色型がある。さなぎで越冬し,幼虫は初夏から秋に見られる。多くのスズメガで発達している口吻(こうふん)は,本種とその近縁種では退化し,成虫は吸みつしない。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報