最新 地学事典 「モーメント・テンソル」の解説
モーメント・テンソル
moment tensor
地震波を励起する力源の最も一般的な表現。隕石の地上への衝突や地球潮汐のような地球外部に起因する力以外の力,すなわち地球それ自身の内部に原因をもつ力による地震源をG.E. Backus et al.(1976)はindigenous sourceと称した。これには非静水圧下の断層面上のすべり(普通の地震)・熱弾性的現象・物性の相転移等が考えられる。このような震源は,観測する地震波の波長が震源域の大きさより十分長いとき,おのおの三つの双極子および偶力を成分にもつ2階の対称テンソル(モーメント・テンソル)で記述できる。平面上での断層運動に対応する力源はダブルカップルと呼ばれる二組の偶力と等価であり,四つの自由度をもつ。モーメント・テンソルは六つの自由度をもち,余分な二つの自由度を非ダブルカップル成分と呼ぶ。非ダブルカップル成分はCompensated Linear Vector Dipole(CLVD)成分と等方成分に分けることが可能であり,これらによりクラックの開閉,等方的な爆発・収縮に対応する力源を記述できる。1970年代までは,ダブルカップルを仮定して地震の解析を行ったが,80年代には良質のデジタルデータが大量に使えるようになり,ダブルカップルを仮定せずに,より一般的なモーメント・テンソルを直接解析できるようになった。現在では,M5以上の世界中の地震のモーメント・テンソルがルーチン的に決められている。
執筆者:原 辰彦
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

