日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤクシカ」の意味・わかりやすい解説
ヤクシカ
やくしか / 屋久鹿
Yaku deer
[学] Cervus nippon yakushimae
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。ニホンジカの1亜種で、鹿児島県大隅(おおすみ)諸島の屋久(やく)島に分布する。屋久島は周囲約100キロメートルの島で、九州最高峰の宮之浦(みやのうら)岳がある。夏はその山頂一帯で生息するが、冬は雪に覆われるため、下がって生活する。体は日本に生息するシカのなかで最小で、肩高約60センチメートル、体重30~50キログラムほどである。角(つの)は雄だけにあり、つねに小さく25~33センチメートルにすぎない。とくに第1枝は短く、ほとんど例外なく第4枝を欠き3尖(せん)である。4~5月の落角後ただちに新たな角が発育し、9~10月ごろに完成する。体色は、夏季は赤褐色に白斑(はくはん)があり、冬季では灰色が強く灰茶色で白斑がなくなる。臀(しり)には通年白斑がみられる。秋から冬にかけては小群をなして生活する。5~6月ごろ1産1~2子を産む。妊娠期間は約8か月、生まれた子には親の夏毛と同様に白斑がある。
[北原正宣]