おおすみ

知恵蔵 「おおすみ」の解説

おおすみ

海上自衛隊の輸送艦。基準排水量8900トンの大型艦で「おおすみ型輸送艦」3隻のうちの1番艦。艦内後部には2隻の輸送用エアクッション艇(ホーバークラフト)を格納。大きな船体船首から船尾まで平らな全通甲板を持ち、ヘリコプター発着が容易で、高い揚陸能力を備える。
艦名は鹿児島県の大隅半島に由来。かつて米海軍から貸与された揚陸艦にも同じ名前がつけられていたことがある(1974年に除籍)。95年12月に起工、96年11月に進水、98年3月に就役した。母港は広島県の呉基地。これまでの戦車揚陸艦型輸送艦が基準排水量2000トン程度に過ぎなかったのに比べ、はるかに大型で優れた輸送・揚陸能力を備える。兵員装備輸送で約330人、人員だけならば約千人が収容でき、優れた医療機能も備えている。
99年のトルコ北西部地震被害では仮設住宅の輸送に携わり、2004年にはイラク復興支援法に基づき同国に軽装甲機動車や給水車を輸送した。11年3月に発生した東日本大震災では救援物資を仙台港に輸送。13年11月フィリピンを襲った台風30号に際しては、援助活動を「サンカイ(現地語で友達の意)作戦」と命名、被害が甚大だったレイテ島で物資輸送や医療行為を行った。
14年1月15日、広島県大竹市阿多田島沖で釣り船「とびうお」と衝突した。「おおすみ」は衝突前に汽笛を数回鳴らしたが直後に衝突。とびうおは転覆し乗っていた4人が海に投げ出された。うち2人はおおすみの乗員によって救助されたが、船長と釣り客の2人が死亡。第6管区海上保安本部が実況見分を始め、とびうおの船体の右舷に衝突の痕跡を確認。おおすみの左舷中央部にも傷があり、とびうおのものと思われる塗料が付着していた。これにより、両船が側面衝突したものとみられている。事故原因などについては、海上保安庁で海難事故として業務上過失往来危険及び業務上過失致死罪の疑いで調査中。海上自衛隊も独自に事故調査委員会を設けて分析を進めている(14年2月13日時点)。

(金谷俊秀 ライター / 2014年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「おおすみ」の意味・わかりやすい解説

おおすみ
Ohsumi

東京大学宇宙航空研究所が打上げた日本最初の人工衛星。ソ連,アメリカ,フランスに次いで,自力で軌道に乗せた。 1970年2月 11日鹿児島宇宙空間観測所からラムダ 4S型5号機で打上げられ,遠地点 5151km,近地点 337kmの長円軌道に乗った。周期は 144.5分で,衛星からの電波は 16時間ほど続いた。その重さは第4段球形ロケットの燃え殻を含めて 23.8kg。科学観測器具はなく,送信機,加速度計と温度計だけを積んでいた。国際的には,1970-11Aと名づけられた。 70年に入ってから 11番目の衛星という意味である。

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百科事典マイペディア 「おおすみ」の意味・わかりやすい解説

おおすみ

1970年2月11日,東大宇宙航空研究所が鹿児島県内之浦町(現・肝付町)の東大宇宙空間観測所から打ち上げた日本初の人工衛星。全長1m,最大直径48cm,重さ23kg,打上げには同じく東大宇宙航空研究所が開発したラムダロケットの4S型5号機が使われた。

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世界大百科事典(旧版)内のおおすみの言及

【宇宙開発】より

… 1960年代の半ばまでは,宇宙開発は米ソ二大国の独占であったが,60年代後半になると両国に続く国が現れてきた。なかでも65年にA1衛星を打ち上げたフランス,70年に〈おおすみ〉を打ち上げた日本,同じく70年に〈東天紅〉を打ち上げた中国の3国は自国で開発したロケットを用い,独力でも宇宙開発を進める意志を示したものであった。さらに71年にイギリスは自力でオーストラリアからプロスペロ衛星を打ち上げ,インドも80年にロヒニ衛星を打ち上げて,自力による人工衛星打上げの7番目の国となった。…

【人工衛星】より

…日本でも1960年代初めには,多段式ロケットの打上げに成功し,人工衛星打上げ技術を整えつつあった。そして,70年,日本最初の人工衛星〈おおすみ〉が東大宇宙航空研究所の手で打ち上げられ,日本の宇宙開発もようやく本格的な時代を迎えたのである。 70年代に入ると米ソは大型有人宇宙船であるサリュート(ソ),スカイラブ(米)を打ち上げ,諸外国を大きくリードしていったが,人工衛星利用に関しては実用面,とりわけ経済的な意味からの再評価が行われ,しだいに実社会の要請に呼応するようになった。…

※「おおすみ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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