日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤノマモ」の意味・わかりやすい解説
ヤノマモ
やのまも
Yanomamo
南アメリカのブラジルとベネズエラにまたがって住んでいる先住民集団。現在ブラジルではヤノマミとよばれることが多い。言語帰属については、チブチャ語族であるとか、カリブ語族に関係があるとかさまざまな説があるが、はっきりしない。言語集団としてはヤノアマYanoamaとよばれる。文献ではワイカWaika、シリアナXiriana、シャマタリShamatariなどさまざまな名前でよばれているが、言語の違いと居住地に基づいて四つの下位集団に分けられている。その居住地はすべてアマゾン川の支流ネグロ川の左岸支流とオリノコ川上流部であるが、南西部を占めるグループをヤノマメYanomam、南東部を占めるグループをヤノマムYanomam、北西部のグループをサネマSanma、北東部をヤナムYanamとよんでいる。人口は1990年にブラジルに1万人、ベネズエラに1万5000人の計2万5000人ほどと推定される。南アメリカに残った文化変容の度合いが少ない最後の大きな先住民集団である。生業の中心は焼畑農耕で、主作物は料理用バナナ(プランテーン)と有毒マニオクである。他の南アメリカ低地先住民と同様に、狩猟採集と漁労も農耕を補うものとして重要である。出自は父系で、それほど遠い祖先まではさかのぼらないものの、父系出自集団が存在する。集落はシャボノやシャプノとよばれ、一人のリーダーによって率いられる。リーダーは村落の中心勢力である父系出自集団のリーダーであるが、村落のなかには複数の出自集団のメンバーがつねにおり、単一のグループだけでできた村落はない。周囲の村落は、交易・祝宴への招待・結婚を通じて同盟関係を結んだものと、互いに略奪しあう敵対者とに分けられる。他の村落を襲撃して女を略奪する行為がしばしば行われたが、その頻度は地域集団によって異なる。サネマやヤナムは外界との接触の度合いが大きく、工業製品などは隣に住む先住民イェクアナYe'cuanaなどを通して入り込んでいる。
[木村秀雄]