ユノミネシダ(その他表記)Histiopteris incisa (Thunb.) J.Sm.

改訂新版 世界大百科事典 「ユノミネシダ」の意味・わかりやすい解説

ユノミネシダ
Histiopteris incisa (Thunb.) J.Sm.

コバノイシカグマ科の多年生シダ植物。常緑性であるが,霜にうたれると地上部は枯れる。地下から地表部に長くはう根茎があり,群落を作ることが多い。根茎と葉柄の基部には狭い鱗片があるが,その他の部分は裸出する。葉は大型で,暖地では長さ2mに達する。葉柄や葉軸・羽軸は赤褐色で,光沢がある。葉面は2回羽状深裂から3回羽状複生,草質,葉の表は鮮緑色から濃緑色裏面は白緑色で,裂片の辺縁はわずかに裏面に巻く。胞子囊群は葉縁に連生し,偽包膜とよばれる折れまがった葉縁で包まれる。胞子は左右相称形で,暖地では年間を通じて熟す。新葉が展開するとき,1対の羽片がひらくまで,先の部分は一時生長を停止する特徴がある。葉柄の基部には通常1個の大型の枝(腋外芽(えきがいが))がある。和名は和歌山県湯ノ峰で発見されたことによる。鉱山跡や温泉地にもしばしば見られる。伊豆半島以南の最暖地に産し,世界の熱帯亜熱帯に広く分布する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユノミネシダ」の意味・わかりやすい解説

ユノミネシダ
ゆのみねしだ / 湯峰羊歯
[学] Histiopteris incisa (Thunb.) J. Sm.

イノモトソウ科の常緑性シダ。根茎は長く匍匐(ほふく)し、暗褐色つやのある鱗片(りんぺん)をつける。形はワラビに似るが葉は大形で2メートルにもなり、表面は鮮緑色、裏面は粉白色である。葉は一対の羽片が伸びるまで先の部分の成長を止めるという特徴をもつ。葉柄や軸は光沢のある赤褐色。胞子嚢(のう)群は、内側に巻いた葉縁で覆われる。伊豆半島以南の暖地にまれに産する。ユノミネの名は、和歌山県田辺(たなべ)市本宮(ほんぐう)町の湯の峰温泉で最初に発見されたことによるもので、同地のユノミネシダは国の天然記念物に指定されている。

[西田治文]

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