改訂新版 世界大百科事典 「ユルタ」の意味・わかりやすい解説
ユルタ
yurt[トルコ]
もともと〈放棄された野営地〉を意味していたが,のち〈住む場所〉〈土地〉〈フェルト製テント〉などの意味に使われるようになった。ユルトというのが原音に近い。トルコ系遊牧民のなかでは,オエイ,ウイ系の言葉がフェルト製テントに対して用いられることが多い。円形のプランと蛇腹式になったヤナギ材の側壁に支えられた天蓋,羊毛製などの組紐で緊縛したフェルト地など,構造的にはモンゴル族のゲルと変わらない。ゲルと比較したユルタの特徴は,天蓋部がやや丸みを帯びている点である。ユルタの天井部はドーム形に近い。トルコ系諸民族を通じて,原則的には入口に対面した奥が上席,向かって左側が男性の場,右側が女性の場,とされている。ウズベク族では黒色のフェルトを用い,トルクメン族では腰壁にアシのすのこを使用するなど,同系の民族の間でも細部における差異がみられる。移動の際,草原では牛車,山岳地域ではラクダなどを使うことが多い。
→テント
執筆者:松原 正毅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報