翻訳|Uzbek
ウズベキスタン共和国を中心に,旧ソ連邦中央アジアやアフガニスタン北部などに居住するトルコ系民族。人口は,旧ソ連領内に約1670万(1989),アフガニスタンに推定180万,中国の新疆ウイグル自治区に約2万。古くはイラン系民族の住地であったこの地域は,トルコ系遊牧民の移住に伴い,しだいにトルコ化され,14世紀末ごろには,トルコ語を使用する人々がほぼ全域に居住するようになった。このトルコ系住民を母体として,16世紀初頭に到来した遊牧民〈ウズベク〉の参加を得て最終的に形成されたのが,現在のウズベク族である。
ウズベクözbekという語が,民族名として初めて史料にあらわれるのは14世紀後半である。当初は,キプチャク・ハーン国領内の草原に住む遊牧民全体をさす名称であったが,15世紀中葉に,ジュチ・ハーンの第5子シバンShibanの後裔よりアブー・アルハイル・ハーンが出て,キプチャク草原に強力な遊牧国家を建設すると,シバン家一族とそれに従属する人々を,とくにウズベクと呼ぶようになった。彼らは,アブー・アルハイルの孫シャイバーニー・ハーンのときに,マー・ワラー・アンナフルやホラーサーンの定住地域に侵攻し,1507年にはティムール朝を滅ぼす。これがシャイバーニー朝で,その後,ジャーン朝(アストラハン朝),マンギット朝と,ブハラを中心とした王朝が続いたため,これらを総称してブハラ・ハーン国と呼ぶ。また別の一派は,16世紀初頭ホラズムにヒバ・ハーン国を建設し,18世紀初頭には,フェルガナを中心にホーカンド・ハーン国が建国された。草原地帯より移住したウズベク遊牧民は,こうした王朝のもとで徐々に定住生活を営むようになり,それに伴って,ウズベクという民族名も,これらの地域のトルコ系住民全体に冠されるようになった。また,13世紀中ごろよりムスリム商人やスーフィーを通じてイスラムを受容し,とくに16世紀以降,イスラムの諸制度をとり入れ,日常生活の面にもイスラムは浸透していった。やがて,3ハーン国は帝政ロシアの侵入を被り,とくに1864年から開始されたロシア軍の攻勢により,ブハラ,ヒバ両ハーン国はその属国となり(それぞれ1868,73),ホーカンドは直轄領となった(1876)。ロシアは,67年にタシケントを主都とするトルキスタン省を設立し,この地域を綿花の一大供給源とすべく,強力に植民地政策を推進していった。そのため,ウズベク農民の没落と貧困化は著しく,ロシア人に対する不満は,大規模な武装蜂起を引き起こすまでにいたった。こうした抵抗運動は,ロシア革命を機に独立運動へと展開していったが,結局赤軍によって鎮圧され,ソビエト政権の支配権が確立した(1922)。1924年に,ウズベク社会主義共和国が成立し,ウズベク族は新国家の発展に向けて第一歩を踏み出すこととなった。1991年にウズベキスタンがソ連邦から独立して以後,ウズベク・ナショナリズムの高揚がみられる。
ウズベク人は多くの民間伝承を伝えており,現在そのほとんどが記録されている。動物や妖精が登場する作品のほか,日常生活に題材を取ったものの中では,冗談屋で知恵者ナスレッディン・エフェンディに,社会風刺のきいた話を語らせるラティーファlaṭīfa(滑稽話)が興味深い。ダースターンdāstān(叙事詩)も一般的で,英雄・戦記物,奇譚,古典文学に範を求めたもの,さらに,権力に抵抗する農民らの姿をうたった近代の作品と多様である。ウズベク文学は,中世トルコ語の一つであるチャガタイ語(古ウズベク語)によって書かれた文学の伝統を引いている。古代トルコ語文学を基礎とし,ペルシア古典文学の影響を受けて成立したチャガタイ文学は,ティムール朝後期に,アリー・シール・ナバーイーやバーブルを輩出して完成期を迎えた。16世紀以降,史書や叙事詩が宮廷文学として書かれる一方,17世紀末~18世紀初頭には,民間伝承に基づく文学作品も作られるようになった。やがて19世紀後半から,ロシア文学の影響を強く受けて,ハムザ・ニヤージー(1889-1929)や,タジク語とウズベク語で作品を書いたアイニーらに代表される民族詩人が登場し,革命後のウズベク文学界をリードすることとなった。
執筆者:堀川 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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【総説】
住居の類語としては,すぐに住宅・住いがあげられる。住宅と住居を比べると,住宅のほうが人間のすみかとしての建物の側面を強く含意する。住い(すまひ)は〈すまふ〉の連用形の名詞化であり,当て字として〈住居〉を用いることがある。つまり住居と住いは一応同義ととらえてよいし,そこには住むという人間の能動的な営み,すなわち人の暮しが浮き出されている。《日本大辞書》(山田美妙著,1892‐93)によると,〈すむ〉には(1)居所を定める〈住む〉,(2)濁りがなくなる〈澄む(あるいは清む)〉,(3)事終わってすべて澄むの〈済む〉があてられており,《岩波古語辞典》では〈すみ(棲み・住み)〉は〈スミ(澄)〉と同根であり,あちこち動きまわるものが,一つ所に落ち着き定着する意とある。…
※「ウズベク族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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