ヨウ化水素酸(読み)ようかすいそさん(その他表記)hydroiodic acid

改訂新版 世界大百科事典 「ヨウ化水素酸」の意味・わかりやすい解説

ヨウ(沃)化水素酸 (ようかすいそさん)
hydroiodic acid

ヨウ化水素水溶液。純粋な溶液無色だが,しばしば溶存酸素のため光により分解し,ヨウ素を遊離するので,褐色に着色する。光を遮断し,あるいは酸素を完全に除去すれば光の中でも安定である。着色したヨウ化水素酸はホスフィン酸を加えて蒸留すれば再び無色の溶液が得られる。

 I2+HPH2O2+H2O─→2HI+H2PHO3

強い酸性を示し,濃厚な溶液は湿った空気中で発煙する。溶液中では事実上完全にH⁺とI⁻とに解離する。同一濃度の溶液ではHIの平均活量係数がHBrやHCl水溶液の値より大きいので,酸としての性質はHBrやHClに比べて強いとみなされている。多くの金属を溶解し,水素を発生して金属のヨウ化物を生ずる。金属の酸化物,水酸化物などを溶解してヨウ化物を生ずる。酸素のほか多くの酸化剤によって酸化され,ヨウ素を生ずる。さらに酸化されればヨウ素酸となる。ヨウ化水素酸の飽和溶液中で250~300℃に加熱すれば,多くの有機化合物炭化水素に還元される。
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化学辞典 第2版 「ヨウ化水素酸」の解説

ヨウ化水素酸
ヨウカスイソサン
hydroiodic acid

ヨウ化水素水溶液をいう.10 ℃ で100 g の水に238 g のヨウ化水素が溶解する.57% の水溶液(密度1.7 g cm-3)は共沸混合物で最高沸点127 ℃ を示す.無色透明で強い酸性を示し,塩化水素酸,臭化水素酸より強い酸である.酸素が共存すると分解してヨウ素を遊離し,黄色ないし褐色に着色し,とくに光によって分解は促進される.多くの酸化剤によって酸化されてヨウ素を生じ,さらに反応が進むとヨウ素酸HIO3を生じる.多くの金属を溶解して水素とヨウ化物を生じ,また金属の酸化物,水酸化物を溶解してヨウ化物を生じる.有機化合物に対して還元剤としてはたらく.ヨウ素化合物の製造,還元剤,医薬原料,エッチング剤,分析試薬などに用いられる.皮膚,粘膜をおかす.有毒.[CAS 10034-85-2:HI]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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