改訂新版 世界大百科事典 「ヨウ化水素酸」の意味・わかりやすい解説
ヨウ(沃)化水素酸 (ようかすいそさん)
hydroiodic acid
ヨウ化水素の水溶液。純粋な溶液は無色だが,しばしば溶存酸素のため光により分解し,ヨウ素を遊離するので,褐色に着色する。光を遮断し,あるいは酸素を完全に除去すれば光の中でも安定である。着色したヨウ化水素酸はホスフィン酸を加えて蒸留すれば再び無色の溶液が得られる。
I2+HPH2O2+H2O─→2HI+H2PHO3
強い酸性を示し,濃厚な溶液は湿った空気中で発煙する。溶液中では事実上完全にH⁺とI⁻とに解離する。同一濃度の溶液ではHIの平均活量係数がHBrやHCl水溶液の値より大きいので,酸としての性質はHBrやHClに比べて強いとみなされている。多くの金属を溶解し,水素を発生して金属のヨウ化物を生ずる。金属の酸化物,水酸化物などを溶解してヨウ化物を生ずる。酸素のほか多くの酸化剤によって酸化され,ヨウ素を生ずる。さらに酸化されればヨウ素酸となる。ヨウ化水素酸の飽和溶液中で250~300℃に加熱すれば,多くの有機化合物は炭化水素に還元される。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報