化学辞典 第2版 「ラジカル捕そく剤」の解説
ラジカル捕そく剤
ラジカルホソクザイ
radical scavenger
遊離基捕そく剤ともいう.熱,光,あるいは放射線化学反応などにおいて,その反応に対する遊離基の寄与を調べる目的で反応系に加えられる物質をいい,遊離基が捕そくされることによって反応機構あるいは最終反応生成物に変化が生じ,この変化にもとづいて反応機構を解明しようとするものである.遊離基が捕そくされて,安定な分子もしくはより反応性の乏しい遊離基になる.原則として遊離基に対して親和性の大きい化合物が用いられるが,その親和力にどれだけ選択性があるか,取り扱いやすいか,測定しやすいかなども目安として総合的に判断して用いられる.ヨウ素,酸素,一酸化窒素,DPPH,硫化水素,オレフィン類,およびそのほかの不飽和化合物が一般によく用いられる.しかし,目的をよく検討したうえで選択されるべきである.たとえば,ラジカル捕そく剤のなかには電子親和力の大きいもの,あるいはイオン化電位の比較的小さいものが多いが,これらは電子あるいは正イオンが反応中間体として遊離基と共存する反応系においては注意して用いる必要がある.また,オレフィン類は熱平衡化した水素原子に対しては大きい捕そく能を示すが,メチル,エチルあるいはそれ以上に大きい遊離基に対しては捕そく能は大きくない.したがって,ラジカル捕そく剤を用いるときには,目的とする反応にもとづいてどの物質がよいか決めることに注意を払うのと同時に,その加える濃度に十分注意する必要がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報