ラディノ
らでぃの
ladino
メキシコ南東部チアパス州およびグアテマラで、白人と先住民(インディオ)の混血をいう。白人と先住民の混血は一般にメスティソとよばれる。先住民とメスティソ(ラディノ)との分類が厳密な生物学的根拠に基づいているわけではなく、遺伝子レベルでは純粋な先住民などもはやありえないともいわれる。そこで重要になるのが社会文化的意味づけであり、ラディノという語にはこの意味合いが強い。ラディノとは、先住民共同体に外部から入り込み、共同体の社会規範に従わず、先住民とは異なる文化を身にまとった「よそ者」であるといえる。たとえば、もともと先住民であった夫婦が自らの共同体を離れ、都会で暮らすことなどを通して異なった生活スタイルを身につけると、少なくともその子供たちはもはや先住民でなくラディノとなる。両親も他の共同体の先住民にとってはラディノであろう。先住民の権利意識の高まりとともに、ラディノを排斥する気運が高まり、とくに土地をめぐっての流血を伴う激しい対立が両者の間にしばしば起こるようになっている。
[木村秀雄]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内のラディノの言及
【グアテマラ】より
…総面積の半分は森林である。 人口の大部分はマヤ系の先住民および混血(ラディノladino)で占められ,白人の比重は小さい。公用語はスペイン語であるが,[キチェー],カクティケル等のマヤ系言語を話す人々も多い。…
【人種】より
… 一方,メキシコ,グアテマラ,ペルーのようなインディオindio人口が多く,かつ先史時代文明が高度に発達した諸国では,社会的人種と呼ぶべき人種概念がある。これらの国では土着のインディオ人口が白人blancoの人口を上回っているが,ラディノladino(中米),チョロcholo(アンデス)と呼ばれる両者の間の混血が全人口の50%に達している。ところが混血とは現実の遺伝子の混入のある個体だけでなく,スペイン語を話し,部分的にでも非伝統文化を取り入れた人々を意味するようになった。…
【メスティソ】より
…現在,メキシコに限らず多くの国で,メスティソ文化はナショナリズムと国民統合の要(かなめ)となっている。 現在,メスティソの名称は地域によって異なり,メキシコでは一般にメスティソ,メキシコでもチアパス州ではラディノladino,グアテマラでもラディノ,ペルーではチョロcholo,ときによりクリオーリョ,ブラジルでは[カボクロ]と呼ばれる。メスティソという用語は必ずしも人種概念ではなく,社会的・文化的アイデンティティを示すものである。…
※「ラディノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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