改訂新版 世界大百科事典 「ラヌッサン」の意味・わかりやすい解説
ラヌッサン
Jean Marie Antoine de Lanessan
生没年:1843-1919
フランスの医師。フランス領インドシナ連邦総督(在任1891-94)で,インドシナにおける協同主義的近代植民政策の推進者。1886年医師としてインドシナに渡り,植民地研究にあたったが,91年フレイシネ内閣により総督に任命された。当時,インドシナ連邦は巨額の財政赤字とバンタン(文紳)蜂起などによる治安の悪化のため,フランス資本の導入が妨げられ,コーチシナを除いて放棄論さえ起こっていた。ラヌッサンはアンナン・トンキン理事長官P.ベールの施策を継いで協同政策をとり,ベトナム人官吏の権限を強化し,フエ宮廷の北部ベトナム(トンキン)に対する宗主権を確認し,村落共同体の自律性を温存した。このため孤立した反仏抵抗は91年末までに多く鎮圧された。一方,ラオスへの進出を積極的に進め,またランソン鉄道をはじめ鉄道建設工事を大規模に起こしてフランス資本の誘引に努めた。また租税制度の整備により財政赤字を解消した。その施策はドゥメール総督(在任1897-1902)に継承・完成された。
執筆者:桜井 由躬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報