トンキン(読み)とんきん(英語表記)Tonkin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トンキン」の意味・わかりやすい解説

トンキン
Tonkin

ベトナム北部,紅河 (ホンハ。ソンコイ川) デルタを中心とする地域の歴史的呼称。ほぼマー川以北をさす。前漢の武帝時代から中国に服属し,交趾郡あるいは交州などと呼ばれていたが,10世紀に独立。ベトナム人の諸王朝が北方の中国,南方チャンパ王国と争いつつ盛衰した。 1430年大越 (後黎朝) の首都がトンキン (現ハノイ) に定められ,18世紀初頭から,ここに拠る鄭氏の支配地域が,ヨーロッパ人によってトンキンと呼ばれるようになった。 1872年のトンキン事件などを経て,83年にフランスの保護領となり,87~1945年にはアンナン,コーチシナカンボジアラオスとともにフランス領インドシナ連邦を構成。第2次世界大戦後は,ベトナム独立運動の中心となった。紅河デルタは肥沃で,米を中心に,ココヤシサトウキビなどが栽培される。ハノイ,ハイフォンナムディンなどの大都市があり,近代工業も発達。ホンガイの無煙炭をはじめ,地下資源にも恵まれる。北部,西部の山地にはタイ族,ミヤオ (苗) 族などの少数民族が住む。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トンキン」の意味・わかりやすい解説

トンキン
とんきん
Tonkin

ベトナム北部に対するヨーロッパ人の呼称。ベトナムではバクボ(北部)またはバクキ(北圻)とよぶのが普通である。東京(トンキン)の名は1430年、黎(れい)朝(レ朝)の太祖が前朝胡(こ)(ホ)氏の東都(ドンド。現ハノイ)を改めて東京としたのに始まる。16世紀末以来、黎朝の権臣鄭(チン)氏の支配する北部地域は、陶器、絹の産地としてヨーロッパ人の注目するところとなり、フエユエ)を中心とする阮(げん)(グエン)氏の広南国(コーチシナ)と区別されて、トンキン王国とよばれた。19世紀後半、フランスはベトナムから北部を切り離すために、この名を積極的に用いるようになり、1887年のフランス領インドシナの成立とともに、北部はトンキン保護領として法定された。現在この名はまったく用いられない。

[桜井由躬雄]

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