「狂詩曲」と訳される。幻想曲風で自由な形式の19世紀の器楽曲。ラプソディーとは元来、ギリシア叙事詩のなかの吟唱者が歌う一つの部分を意味した。この表題を共有するロマン派の器楽曲も、とくに初期のものは叙事詩的、英雄的、民族的性格を備えている。リストの19曲の『ハンガリー狂詩曲』(1846~85)はその好例であり、ドボルザークやバルトークの作品にもこの特徴が認められる。しかしブラームスの『二つのラプソディー』(1879)はバラード風の性格を示しており、さらに新しい時代の自由な感情表現の傾向を示す作品には、ジャズの語法を用いたアメリカの作曲家ガーシュインの『ラプソディー・イン・ブルー』(1924)がある。
[寺本まり子]