ランプシニトゥス(英語表記)Rhampsinitus

改訂新版 世界大百科事典 「ランプシニトゥス」の意味・わかりやすい解説

ランプシニトゥス
Rhampsinitus

エジプトの架空の王の名。ギリシアの歴史家ヘロドトスが,伝承の怪盗物語を再話したとき,王の名をランプシニトス(ラテン語読みでランプシニトゥス)としたため,この名がある。

 ランプシニトゥス王の宝物殿を建てた大工は,壁の石を1個だけ抜けるようにつくる。死の直前,大工は2人の息子にそれを打ち明ける。宝物殿が荒らされるので,王は中にわなを仕掛けさせる。兄がわなにかかるが,兄は身許が知られないようにと,自分の首を切り落とすことを弟に命じる。王は首なし死体を広場にさらし,悼んで泣くであろう近親者を捕らえようとする。母が死体を取ってくるように言うと,弟は袋にブドウ酒をつめてロバに積み,死体のそばで,袋からブドウ酒がもれるようにする。番兵がこぼれたブドウ酒を飲んで酔ったすきに死体を持ち去る。怒った王は,望みの者に王女寝床を共にさせると布告し,王女には,客に自分のした一番悪いことをしゃべらせて犯人を発見せよと命じておく。弟も行くが,証拠をつかまれない。王は盗賊の賢さに脱帽し,自首すれば王女の夫とすると布告する。弟が自首し,エジプト最高の賢者とあがめられる。

 この話の原郷土はエジプトと考えられているが,インドオリエントに早くから知られていた。《パンチャタントラ》,中国の《トリピタカ(南伝大蔵経)》にも記録がある。モンゴル北アフリカでは,現在でも口伝えの記録がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のランプシニトゥスの言及

【トロフォニオス】より

…この神託所は前6世紀以降有名となり,リュディア王クロイソス,マケドニア王フィリッポス2世などの有力者も神意伺いの使者を遣わした。なお,ヘロドトスの《歴史》第2巻には,上記の首切り話に酷似したエジプト王ランプシニトスRhampsinitos(ラテン名でランプシニトゥス)の宝蔵の物語がある。【水谷 智洋】。…

※「ランプシニトゥス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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