リン酸水素アンモニウム(読み)リンサンスイソアンモニウム

化学辞典 第2版 「リン酸水素アンモニウム」の解説

リン酸水素アンモニウム
リンサンスイソアンモニウム
ammonium hydrogenphosphate

酸性リン酸アンモニウムともいう.肥料業界ではリン安とよばれる.リン酸二水素アンモニウムリン酸水素二アンモニウムがある.【リン酸二水素アンモニウム((mono)ammonium dihydrogenphosphate):NH4H2PO4(115.03).略称MAPADP.第一リン酸アンモニウムともいう.電気光学分野ではADPとしてよく知られている.リン酸水溶液アンモニア水を加えるか,またはアンモニアを通じ,pH を3.8~4.4で晶出させると得られる.無色の正方晶系結晶.密度1.803 g cm-3.融点190 ℃.溶解度36 g/100 g 水(20 ℃),120 g/100 g 水(80 ℃).1% 水溶液の pH は4.5.エタノールに難溶,アセトンに不溶.二アンモニウム塩および三アンモニウム塩に比べて非常に安定である.190 ℃ 以上ではアンモニアを放出して分解し,メタリン酸アンモニウムを生じる.室温で誘電率の大きい常誘電体,-125 ℃(ネール温度)以下では反強誘電体.単結晶は圧電素子,ポッケルス効果光学素子として用いられる.肥料,防炎剤,消火剤,指定食品添加物(イーストフード,醸造用剤,乳化剤),緩衝溶液培養基などに用いられる.[CAS 7722-76-1]【】リン酸水素二アンモニウム(diammonium hydrogenphosphate):(NH4)2HPO4(132.06).略称DAP.第二リン酸アンモニウムともいう.リン酸水溶液にアンモニア水を加えるか,またはアンモニアを通じ,pH 5.8~6.8で晶出させると得られる.無色の単斜晶系結晶.密度1.619 g cm-3.溶解度72 g/100 g 水(25 ℃),131 g/100 g 水(15 ℃).アセトンに不溶.1% 水溶液の pH は8.0.155 ℃ でアンモニアを放出して分解し,リン酸二水素アンモニウムを生じる.肥料,防炎剤,指定食品添加物(イーストフード,醸造用剤,乳化剤),培養基などに用いられる.[CAS 7783-28-0] 
リン安(リン酸アンモニウム)は,MAPとDAPの混合物で,3要素系肥料の中間原料として大量に生産される.肥料としては,NH3とH3PO4のモル比が1.4未満のものをMAP,1.4以上のものをDAPとよんでいる.工業的製法には,リン酸液と無水アンモニアの反応による湿式法(スラリー法)と,気体アンモニア中にリン酸をスプレーする乾式法とがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android